東宝東和の底知れぬ言語感性。 ガバリン
印象を一言でまとめれば“おととい栓抜いたコーラ”なのですが、実はこの“ゆるさ”を楽しむ映画なのかもしれません。
「ガバリン」(1986年/スティーブ・マイナー監督)
原題は「HOUSE」だったり「GOBLIN」だったりするのですが、ゴブリンではなくガバリンとした所に東宝東和の底知れぬ言語感性を見ることができます。
忽然と消えた息子。「この家は呪われている」と言い残して首を吊った叔母。
息子を探すビリー(ウィリアム・カット)の前に現れる異界の化け物(モンスターやゴーストと言うよりは“妖怪”に近い)。
道具立ては“いい感じ”だし、コメディ仕立てにしたのも正解・・なのですが、お話のまとまりがすこぶる悪い。
家に祟りとか怨念とかあるのかと思えば何もない・・どころか、元凶はジミーのベトナム従軍時代の同僚との遺恨・・って家、関係ないじゃん!
ウィリアム・カットがベトナム帰りという設定に説得力が微塵もなく(「ビッグ・ウェンズデー」は忘れてくれ)、挿入されるベトナムの回想が浮いている上にリアリティがビタ一文無いというのも「なんだかなあ」。
隣人のデブくんとセクシー姉ちゃんは単なる賑やかしで、お話にろくすっぽ絡まないし。
スティーブ・マイナーにサスペンスの演出能力が無いってのが一番の問題ですが・・。
とは言え、“アメリカン・ヒーロー”ウィリアム・カットのすっとぼけたリアクションのおかげで、不思議と好印象&後味爽快な出来にはなっています。
「ショーン・オブ・ザ・デッド」のスタッフ、キャストでリメイクしたら物凄く面白くなるような気がするのですが・・。
※ウィリアム・カットと言えば・・「ビッグ・ウェンズデー」→2009年1月18日