デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

パラダイス・アレイ(そして追悼:山本小鉄)

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新日本プロレスの鬼軍曹、山本小鉄氏がお亡くなりになりました。

8月28日。低酸素性脳症。68歳。

まだ若いよなあ。今日は小鉄さんを偲んで、昭和のプロレスの匂いがするこの作品を。

「パラダイス・アレイ」

(1978年/シルベスター・スタローン監督)


1946年。ニューヨーク・スラムのどん底で喘ぐイタリア移民3兄弟の成り上がり物語。

のっけからスタローンの歌う主題歌にのけぞります・・脚本書いても監督やっても出演してもいいが、歌は歌うな。

傷痍軍人で死体化粧師の長男レニー(アーマンド・アサンテ!)、ノリだけでその日暮らしをしている次男コスモ(スタローン)、頭は弱いが力自慢の三男ヴィクター(リー・カナリート)。

コスモはヴィクターの腕力を利用してナイトクラブ「パラダイス・アレイ」の賭けレスリングで一山当てようと企みますが・・。

レニーの元カノ問題とか、レニーとコスモの確執とか、結構色々なエピソードを盛り付けているのですが、そのほとんどが見事に投げっ放し

あちこち突っ込みたいのは山々ですが、プロレス・シーンが素晴らしいので全部チャラ。

それまでの遺恨からメインは反則上等のラフ・ファイトになるかと思いきや、王道・正当なアメリカン・プロレス。

なんせ悪役(兼振り付け)がテリー・ファンク。左右のトリッキーなヘッドロックからカニ挟みという佐山タイガーばりの動きから、コブラ・ツイスト~河津落としというBI砲攻撃まで百花繚乱。

のみならず、兄ドリーやディック・マードックなど往年の名レスラーも瞬間的に顔を出しているので気を抜けません。

全体的に作りが超ポジティブ。金も家族も失い、歳で返り咲きも困難な黒人レスラーが身投げするシーンですら、どこか突き抜けた明るさがあります。

『どこに行くんだ?』

『身投げするんだ』

『なぜ?』

『嬉しいからさ。人は普通悲しくて死ぬが、俺は嬉しい時に死にたい。友達になってくれてありがとう』

シルベスター・スタローン。歌さえ歌わなければいい奴です。きっと。