デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

イア!イア!クトゥルフ・フタグン! DAGON

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原作原理主義の人からはダメ出しの嵐を喰らっておりますが、なんのなんの。

ゴードン×ユズナのラヴクラフト物の中では出色の出来栄えです(「死霊のしたたり」とか「フロム・ビヨンド」のせいで原作準拠のハードルが物凄く低くなっている)。

「DAGON」(2001年/スチュアート・ゴードン監督)

原作はインスマウスの影」

資金調達の都合で舞台をスペインに移したのが良い方に転んでいます(原作はマサチューセッツ州の古い港町)。

スペインの港町と言えば「ザ・チャイルド」。向こうは太陽燦々でしたが、こっちはどんよりと湿った空気に支配された白い壁と石畳。

2組のアメリカ人カップルが船でバカンスを愉しんでおりましたが、突然の嵐に襲われて船が座礁

助けを求めた港町には人影がなく、やがて4人はバラバラに・・。

湿度400%の町並みは(異論はあるでしょうが)インスマウスのイメージにぴったりです(劇中の地名はインボッカ。ボッカはスペイン語で“口”の意味なんだそうで)。

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スペイン語圏で英語が通じない(展開の都合上、中盤以降は英語になりますが・・)というのも主人公たちの孤独と不安を煽って正に“怪我の功名”。

そして夜の雨の中、わらわらと集まってきたのは、不自然な歩き方と奇怪な言語を発する村人たち。

いい感じに原作のイメージを取り入れつつ、映画的ふくらみも持たせています。悪ノリを封印したゴードン演出、好感触です(ゴアシーンひとつは御印って事で)。

ただ、VHSジャケットの“伝説のモンスター・ パニック・ホラー”というコピーはどうかと思うぞ。船よりでっかい怪物のイラストとかあるし。

DVDでは気が咎めたのか、“海の底から迫り来る!”というおとなしいものに変わりましたが、船よりでかい口の怪物イラストは健在。

役者の中では“Deep One”のプリンセスを演じたマカレナ・ゴメスが印象的。吸い込まれるような眼。既に半分魚類になっているのに威厳をもった美しさを湛えています。

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国内版DVDは廃盤。中古が大笑いな値段になっています。私は字幕はVHSで、画像と音響は輸入版DVDで、という2段構えにいたしました(再販してくれぇ!)。