古典的恐怖映画(ゴシック・ホラー)の佳作と言えなくもないですが、如何せん話が暗すぎ。
「キャッスル・フリーク」
(1995年/スチュアート・ゴードン監督)
ベースになったのはラヴクラフトの「アウトサイダー」。
とあるアメリカ人家族がイタリアのとある古城を相続したものの、城には怪物がいて大騒ぎ。
というよくある話なのですが、設定と展開が悲惨通り越して陰惨。
まず、アメリカ人家族。お父ちゃん(ジェフリー・コムズ)の不注意による交通事故で息子死亡、娘失明。以来、お母ちゃん(バーバラ・クランプトン)はお父ちゃんなじり続け。
「あなたが死ねば良かったのよ!」
で、城の怪物。実は怪物ではなくて、城の持ち主であった女性に5歳の時から40年に渡って監禁・虐待されていたひとり息子ジョルジュ。
夫に逃げられたショックで気が狂い、自分を棄てた夫に復讐する為に息子を虐待し続けていたのです(いい話・・じゃないな)。
息子は5歳の時の写真を見る限り、ごく普通の健常者。それが暗闇で40年間鞭打たれる間に醜いフリークスに。そして母親は、息子を監禁したまま心臓発作で死亡。
つまり、息子を亡くして人生テンパリまくりの男と、実の母親に虐待されまくって人生の意味すら理解できない男の道行きのお話なのです(実にいい話・・じゃない!)。
40年ぶりに“若い女(コムズの娘)”を見たジョルジュは股間膨らませて大興奮。自らの親指を喰いちぎり、手枷を外して大脱走。
お母ちゃんにセックス拒絶されたお父ちゃんが連れ込んだ商売女を襲ってはみたものの、当然童貞で、エロ本もエロサイトも見た事がなく、悪友の自慢話も聞いた事が無いジョルジュはどうしていいか分からず、女の乳房を喰いちぎって食べてしまいます。
で、死体が発見されて父ちゃんは容疑者として逮捕(心温ま・・らない!)。
冤罪はその真偽が観客にも分からない(ひょっとしたら本当に殺ったのかもしれない)場合はサスペンスとして機能しますが、そうでない場合はストレスにしかなりません(警察の態度がまたムカつくんだ)。
優れたホラーに必要なのはユーモアのセンスである事は繰り返し主張するところですが、もう少し息の抜けるシーンを入れてくれないと観ているこっちがテンパってしまいます。
やはり、ゴードン映画の製作はブライアン・ユズナ(←変態だからいい具合に話が捻じ曲がって結果、バランスのとれた作風になる)にお願いしたいものです。
※参考:「ZOMBIO 死霊のしたたり」→2008年1月2日
「フロム・ビヨンド」→2010年8月18日
「DAGON」→2010年9月10日