マイケル・パレとナンシー・アレン。見事なまでにSFが似合わない二人がB級の誉れを華麗に上塗り。
(1984年/スチュワート・ラフィル監督)
その筋ではつとに有名な都市伝説“フィラデルフィア 実験”。
時は1943年10月28日。ペンシルバニア州フィラデルフィアの海上に浮かぶ駆逐艦エルドリッジ号。
高周波・高電圧の磁場発生装置テスラコイルによって、戦艦の磁気を消失させ、戦艦をレーダーから不可視化(ステルスですな)しようという実験が行われました。
実験は成功。エルドリッジはレーダーから消失・・勢い余って視界からも消失。2500km離れたノーフォークまで瞬間移動(&瞬間帰還)という豪快な離れ業を披露・・
・・した、というのが都市伝説のあらましですが、映画は更にエッジの効いたハッタリをかまして、駆逐艦を時空の狭間にスライド・イン!
なんじゃこりゃあ!と艦を飛び降りたデヴィド(パレ)とジムは1984年のネバダ砂漠にライド・オン!
そこでは懲りない科学者が再びフィラデルフィア実験をしておりました。
実験は失敗。天にパックリ口開けた時空の穴が閉じず、町をまるごと吸い上げて大騒ぎ。その中には未だテスラコイルの電源の切られていない駆逐艦が。
という壮大なSFなのですが、作り手がデヴッドと84年の女性アリソン(ナンシー)の恋物語という“男性客も女性客も呼んじゃうぞ態勢”を採ったため、SF色・サスペンス色共に希薄です。
とは言え、このパターンは「タイム・アフター・タイム」や「ユニバーサル・ソルジャー」を観ても分かる通り、過去→現代型タイムスリップの鉄板お約束フォーメーション。
オートマ車を運転できないパレとか微笑ましい限り。
実はこの企画、当初はジョン・カーペンター監督・脚本で進んでいたものが諸般の事情で担当替え(脚本も書き直し)になったんだとか。
一応、製作総指揮としてカーペンターの名前は残ってはいますが、予定通りカーペンターの脚本・演出で映像化されていたら、と思うと残念でなりません(男侠満点のハードSFアクションになっていたでしょう、多分)。
唯一、戦艦が元の時代に戻ってきた時の船内描写(黒焦げ死体とか、甲板と融合して半身だけ出ている船員とか、床から生えた手とか)は素ン晴らしい出来でしたが。
可能であればカーペンターでリメイクを。