“メスカリン幻覚考證:早稲田大学心理学教授 戸川行男”
ちょっと他ではお目にかかれないクレジットに思わず「お?!」。
「虹男」(1949年/牛原虚彦監督)
遅ればせながら(遅すぎだな)小林桂樹追悼企画。
普通、小林桂樹と言えば「江分利満氏の優雅な生活」か「黒い画集」「日本沈没」あたりですが、ひねくれ者なので敢えてこれを。
麻耶家に伝わる虹男の伝説を利用した連続殺人事件。小林の役どころは真相究明に一役買う新聞記者。
幻覚を映像化、しかもそこだけカラーフィルム、大映なのに特殊効果に円谷英二、そしてポスターには謎の怪人、虹男。
期待に胸膨らみまくりですが、これが下痢腹に浣腸な不遇映画。
まず、肝心のカラーパート(幻覚シーン)がフィルム紛失ですっこ抜け。
当時の記録と記憶から、それらしいシーンを復刻させたものの、これが床屋の回転看板のような(あるいは「みんなのうた」のアニメような)7色の線がぐるぐる回るだけのチープなもの(円谷英二呼ぶ必要ないだろ)。
台詞がぼこぼこ飛ぶので、ヤバイ事言ってんのかな?と思ったらキチガイ乱発。ただ単にフィルムの保存状態が悪かっただけのようです。
最大の致命傷は(ネタバレするぞ)、“虹男なんか出て来ない”(あぁ言っちゃった)。
おいおい、フィギュアまで作っておいてそれはないだろう。
お話はゴブリンの音楽でもかければ立派なジャーロ(2時間サスペンスとも言う)になる正統派ミステリー。電送人間、ガス人間のような怪物シリーズではありません。
だったら、あんなポスター作るなよ・・。
ついでに原作(未読)では、映画ラストで捕まった犯人とは別に真犯人がいて、もうひと波乱あるようなのですが、綺麗さっぱりカットされています。
あからさまなミスディレクション・カットがいくつかあったので確信犯なのでしょう。
原作の期待、ポスターの期待、カラー特撮の期待全てを裏切った罪な奴です。