デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ひし美ゆり子万歳! ポルノ時代劇/忘八武士道

イメージ 1夜の橋に数人の人影。いきなりの大立ち回り。刀と刀がぶつかりあうと火花と共にスタッフ・クレジット。

更に相手を斬ると飛び散る鮮血と共にキャスト・クレジット。

凄まじい太刀捌きで腕から頭からすっ飛ばしているのは凶状持ちの人斬り侍、明日死能(丹波哲郎!!)。かっちょいいにも程があります。

「ポルノ時代劇/忘八武士道」
(1973年/石井輝男監督)

死能はひょんな事から葵の紋に守られた吉原のドン、大門四郎兵衛(遠藤辰雄)のもとで “忘八”の仲間に。

“忘八”とは、八つの徳「孝、悌、忠、信、礼、義、廉、恥」を忘れた人でなし、人の仮面を被った鬼畜生。吉原を仕切る女衒兼遊女育成・監督・仕置き役です。

死能は、幕府の傘の下にある吉原と諸大名に庇護された格安風俗店の代理戦争(要するに縄張り争い)に巻き込まれていくのですが、そこいらへんはどうでも良くて(笑)。

本作の見所(影の主役)は“女忘八”のリーダーお紋役のひし美ゆり子です。

アンヌ隊員の頃は演技も固くぎこちなかったですが、服と一緒に色んなものを脱ぎ捨てたようで、水を得た魚のようなイキの良さ。

弁舌爽やか活舌鮮やか。走る、脱ぐ、斬る、脱ぐ、責める、騙す、縛られ抱かれてまた脱いで。出し惜しみ無し。

遊女乱舞の裸祭りで“ポルノ時代劇”の看板に嘘偽りはありませんが、ひし美ゆり子だけでも十分元がとれます(当時26歳!)。

クライマックスは、死能対捕り方数百名。アヘンを吸わされ禁断症状の出た状態で取り囲まれた死能は、自らの足に小太刀を、更に足の甲を人斬り大刀“鬼包丁”で貫いて幻影払拭、岡本喜八版「大菩薩峠」の机竜之介と「IZO」を足しっぱなしにした大暴れ。

「凄え・・」
「ようっく観ておけ。吉原末代の語り草だ・・」

異能作家・小池一雄、カルト監督・石井輝男、霊界俳優・丹波哲郎、ポルノ開眼・ひし美ゆり子による奇跡のカルテッド。いやあ、傑作。

因みに、タランティーノキルビル」のルーシー・リューの役名オーレン・イシイのイシイは石井輝男のイシイです。

※参考:「アブサン飲んで幻覚舞踏。 女体渦巻島」→2010年3月26日