ゆったりまったりした話の流れをたった一枚の絵柄で捻じ曲げる・・海外で三池の名前を知らしめた恐怖の1本です。
「オ-ディション」 (1999年/三池崇史監督)
妻に先立たれた映像製作会社の社長・青山(石橋凌)は、息子の「最近、しょぼくれてんじゃない」の一言に再婚を決意。
映像企画会社の友人・吉川(國村隼)と映画のオーディションにかこつけた「理想の花嫁探し」を実施。
その中のひとり、山崎麻美(椎名英姫)に一目惚れした青山は首尾良く、彼女とのパーソナルな接触に成功、好感触に浮き足立ちますが・・。
ここまでは実にフツーの展開。連続ドラマ「オヤジの再婚」って感じです。
が、彼女の部屋が映し出された瞬間、気温急低パーシャル冷凍。
薄暗いアパートの一室。ペタリと座り込んで、首が折れる程うなだれている女の後ろ姿。手元には旧式の黒電話。そして、その奥には無造作に転がされた巨大なズタ袋。
彼女と接点のあったディレクターは行方不明。バイト先のバーは無人。
『ママが殺されてね。バラバラにされて。で、警察がバラバラ死体集めて組み立てたら、指が三本と耳と舌が余計にあったそうですよ。バイト? いやそんな娘は…』
椎名英姫(現・しいなえいひ)のような黒髪ストレートのヒラメ顔って結構好み(類似顔:スー・チー)なので、のめりこんでいく石橋凌の気持ちが良く分かります(笑)。
2000年の第29回ロッテルダム国際映画祭にて記録的な途中退場者を出しながら、国際批評家連盟賞・オランダジャーナリズム連盟賞をダブルで受賞。
2001年のアイルランド映画協会員限定上映会では会員の何人かがショックで倒れ、ひとりはセント・ジェームズ病院に搬送。
2007年、米国TIME誌選出「ホラー映画トップ25」に邦画で唯一ランクイン。
米CATV局BRAVO選出「The 100 Scariest Movie Moments」第11位。
英雑誌Total Film選出「ホラー映画オールタイムベスト50」第29位
国内知名度は限りなくゼロですが、海外では最も知られた和製ホラーの一本です(原作は村上龍)。
因みに2002年のニューヨーク上映会の当日、貿易センタービルに飛行機が突っ込みました(上映会は予定通り開催)。
前半のまったりを支える國村隼の安定感が素晴らしいですが、ほとんど誰が演じているのか分からない大杉漣の演技を超えた演技を高く評価します。
※参考:「制服×ミニスカ×日本刀×噴血=無敵。東京残酷警察」→2009年4月20日