志保美悦子亡き後(死んでませんが)、空席が続く“アクション女優”の座。
一時、釈由美子が後を継いでくれそうな気配がありましたが、どうも本人にその気が無かったようで。
水野美紀。もはやこの人だけが最後の希望です。
小学生時代から少林寺拳法を学び、デビュー後は倉田プロでアクションに磨きをかけ、「燃えよドラゴン」の“蹴り足を上げた姿勢で上体を90度ひねる”ポーズを体得したのに、どこからもそんなオファーは来なかった、と嘆く“心にドラゴンの宿った”女。
ちょいと回り道をいたしましたが、落ち着く所に落ち着きました。
バーニングと袂を別った女に失うものなぞありゃしません。血飛沫地獄に女神降臨。
「ハード・リベンジ、ミリー」
(2008年/辻本貴則監督)
夫と子供を殺され自らも瀕死の重傷を負った“普通の主婦”ミリー(水野)が、全身凶器の改造人間となって復讐を誓う。
「修羅雪姫(梶版ね)」「キルビル」に連なる“復讐する女”もの。
復讐ものは、その原因となる悲惨な事件の存在が大前提で、そこを丁寧に描く事で主人公に感情移入をさせるのがお約束ですが、私はここが鬱陶しくて苦手です。
本作はその部分を気持ちいいくらい豪快に割愛。
オープニングで「銃刀法撤廃!」「都市機能壊滅!」「大都市砂漠化!」という偏差値貧乏なテロップを景気よくかまして、状況説明終了。
無法地帯となった横浜・本牧を走り抜ける一台の車から降り立った全身レザーのマッドマッ、あいや水野美紀。
遺恨の描写は適当にカットバックで済ませて、後は復讐・復讐また復讐。
腕に仕込んだ折り畳み式日本刀と膝に内蔵したショットガンというビジュアル重視の必殺兵器にスタント無しの肉弾アクション。
ここに「今日の血糊は何リットル?」な西村喜廣の特殊造形が加わってブレーキ崩壊。
低予算を心意気だけで乗り切った疾風怒濤の44分(短いって言うな!)。
「一生分の血糊を浴びました!」と言っていた水野さんですが、続編「ブラッディ・バトル」で更なる血糊を浴びるのでした(めでたし、めでたし)。