デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

新宿インシデント前史~やくざ喫茶の思ひ出

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今月頭に御紹介した「新宿インシデント」は90年代初頭の新宿・歌舞伎町を舞台にしておりますが、その数年前、80年代後半は移民もまだ少なく、意外と牧歌的でした。

私は根が小心、と言うかとことんケチなので、博打というものに嵌まったことがありません。競輪、競馬、競艇は言うに及ばず麻雀、パチンコ、ポーカー、バカラ、ルーレット、花札、丁半、ちんちろりん、あらゆる賭け事を素通りして来ましたが、一度だけ当時勤めていた会社の営業所全員で仕事を忘れて通ったお店がありました。

それは、やくざ屋さんのゲーム喫茶。

所は歌舞伎町の裏通り。看板も出ていない雑居ビルの地下1階。

社名も店名もない鉄の扉を押し開けると中は明るく静かでこじんまりとしたパーラーの趣き。

並んでいる機会はフルーツと呼ばれる9面スロット。流れている9つの画面の縦横斜め8通りの絵柄が揃えば絵柄に応じたレートでポイントが加算される仕組みです。

店に入るとまず適当な金額(3,000円くらい)を店の人に渡して、初期ポイントを設定してもらいます。なくなればまた現金を渡して所持ポイントをつけてもらいます。

9面全部が果物の絵になったら大声で「フルーツ!」と叫びます。するとお店の人達(やくざですが)全員が機械を取り囲んで直立不動、きっちり90度腰を折って「おめでとうございます!」と祝福してくれます(フルーツは特別レートでポイントがっつりなのです)。

とは言え勝負は運否天賦(いや勿論、胴元が操作しているんだけどさ)。すっからかんになった夜に残金出し合って食べたちゃんこ鍋が妙に美味くて。

『伊藤、すった金で喰う鍋はうまいなあ』

『先輩、その日本語間違っていると思います』

以来、「鍋」がゲームの隠語になりました。

夕方、営業所戻って日報書いていると、先輩があさっての方を向きながら、

『伊藤・・・鍋が喰いたいなあ』

はいはい、行きますよ、と立ち上がると何故か所長以下所員全員が帰り支度。

顔馴染みになったメンバーは飲み食い無料なので、ビールだ焼きそばだと宴会気分。ここで予て気になっていた疑問を。

『あの・・この店見つけたの所長ですよね? 
 何で知ったんですか、ここ』

『飛び込み営業。飲食セミナーの』

いやいや普通飛び込まねーだろ、こんなトコ。第一ここが何屋か分からねーじゃん。

『伊藤、営業ってのはそういうもんじゃないんだよ。
 あ、フルーツ!』

『おめでとうございます!』

受注の為なら鉄の扉も躊躇なく押し開ける・・飛び込み営業は奥が深い・・。

※参考:「Vシネ×香港ノワール×ジャッキー。新宿インシデント」→2010年12月1日