原作者が製作総指揮、興行収入が前作の5倍強・・それなりに期待していたのですが。う~ん、困った。ちょっと薄すぎないか。
「ONE PIECE FILM STRONG WORLD/ワンピース フィルム ストロング・ワールド」(2009年/境宗久監督)
連れ去られたナミを奪還する、というシンプルな骨子の中で、かっちょ良さを追求する、という姿勢は評価します。
作画や構図も流石な出来栄え。ただ、脚本が弱い。
劇場版は、原作の流れに囚われない利点がある代わりに、前振りも引っ張りも効かない一発勝負。
となると決め手は設定と脇キャラの立ち具合という事になりますが・・。
設定・絵柄はデジャブの嵐(「ラピュタ」「OVAデビルマン」「中国の鳥人」etc.)。
前作(エピソード・オブ・チョッパー)は、悪役もさることながら、レギュラーのゲスト化、ヒルルクとくれはという準主役級の脇キャラ擁立、更に複数ドラマの同時進行という凝った構成がドラマに“深み”を与えていたのですが、本作では・・。
“幽閉されたお姫様の奪回”は物語の鉄板フォーマット。既に「カリオストロ」やTV版うる星やつらの「スクランブル!ラムを奪還せよ」「死闘!あたるvs面堂軍団」といった名作がゴロゴロしています。
この名作群に本作を加えられるかと言うと、躊躇せざるを得ません。
敵・味方を問わず、隙あらばボケ、間髪を入れず突っ込むという全方位コント体制はなかなかに楽しめましたが、本道の展開がしっかりしていなければ小芝居も映えません。
特に原作の熱狂的ファンという訳ではないので“ニワカは口挟むんじゃねぇ!”と言われると沈黙せざるを得ませんが、原作者が目指した“男の子がワクワクする感じ”を味わうことは出来ませんでした。
あと、伝説の大海賊、金獅子のシキの声をアテた竹中直人は上手いとは思いますが、竹中特有のコブシというか節が強すぎて「ああ、いつもの竹中直人だなぁ」としか思えなかったのも敗因でしょう(これに比べたら「パトレイバー2」の荒川茂樹は絶品でした。演出家の手綱捌き力の違いでしょうか)。
★ご参考