ホラー、テラーからちょっと目先を変えて青春ドラマを一発。
年代によっては中村雅俊=「夕陽ヶ丘~」だったり、「俺たちの旅」だったりすると思いますが、あたしら世代にとって中村雅俊と言えば、
「われら青春!」
(1974年4月~9月/日本テレビ放送)
表題は太陽学園主催のマラソン大会で自分の順位をあげることよりも落伍者を一人も出さずに全員完走させることを選んだ生徒たちを観て感動した先生(中村)の叫び。
『あれ、先生、泣いてんの?』
『泣いてなんかいない』
『またまた強がり言っちゃって。
じゃその目から出ているのは何?』
『・・・これは、汗だ』
『汗?涙でしょ』
『涙は心の汗だ!』
顔面ぐしゃぐしゃのエテ公面になっているどんぐり垂れ目の中村。くさい、くさすぎる。しかしこの番組が凄いのは、視聴者が何か考える前に音楽で強引に盛り上げてしまうテクニックを持っていることです。
「涙は心の汗だ!」の台詞の後、間髪を入れずにジャンと瞬間的な前奏が入り、♪生まれてきたっのは、なはぁーぜさ、というスタッカート効きまくりの主題歌が流れ、全てをうやむやにしてしまうのです。
この小娘手なずけるようなおじさまテクニックは、第1話から炸裂しています。
赴任した第1話でいきなり教師を辞めることになった中村が、駅のホームに佇んでいると、向かいのホームからラグビーボールが飛んで来ます。中村を追ってきた生徒たちです。そして、先頭の生徒が一言。『帰って来いよ』
ラグビーボールを見つめる中村が顔を挙げると、顔面ぐしゃぐしゃのエテ公面でどんぐり垂れ目の逆大魔神に。そして彼は叫ぶのです。
『俺はお前達が好きだあ!』
間髪を入れず、(ジャン)♪生まれてきたっのは、なはぁーぜさ、と主題歌。この後、中村と生徒たちは線路を挟んでラグビーボールをパスしながらホームを突っ走る。いいのか?
一歩間違えれば大爆笑必至のシチュエーションを見事に救い、あまつさえ視聴者に感動まで与えてしまうタイトロープ演出。
でもねえ。青春ドラマはやっぱこうでなくっちゃ。「涙は心の汗だ!」いい台詞です。金八先生なんか嫌いです。安保に破れて坂本龍馬に憧れて独りよがりな四畳半フォーク演った挙げ句に教師って? 一番盛り上がる時の音楽はニューミュージック(死語)にもっていかれたくせに。結局、奴らの方法論は「言葉」。贈ってほしくありません、そんな言葉。雪崩式に話が暗くなっていく展開も鬱だし。
それに引き換え「われら青春」(前作の「飛び出せ青春」もですが)は、行動が先にきているでしょ。「♪だから探すんだ君と」とか「♪涙は心の汗だ。たっぷり流してみろよ」とかさ。
こういう天真爛漫なイジメのない(別にリアルなんか求めてないし)青春ドラマってもう作られないんでしょうねえ。