ダンカンが北野作品との類似を指摘しておりましたが、お前どこに眼ぇつけとんじゃ。
「新宿インシデント」(2009年/イー・トンシン監督)
日本側のキャスティングが竹中直人(日本黒社会)、加藤雅也(荒ぶる魂たち)、峰岸徹(極道戦国史・不動)、長門裕之(許されざる者)・・どう見ても視野に入れているのは三池でしょう(キャラもほぼ三池作品登場時と同じ)。
日本で消息を絶った恋人を探すため、密航船で日本に来た鉄頭(ジャッキー・チェン)。
ヤクザと華僑が仕切る歌舞伎町。偶然発見した恋人シュシュは裕子と名前を変えて歌舞伎町を仕切る三和会幹部江口(加藤雅也)の妻となっていました。
いくつかの事件を経て、裏社会でのし上がる事を決意する鉄頭。
アクションもユーモアも封印したジャッキーをどう見るかで評価が分かれると思いますが、私は是。
ジャンパーの饐(す)えた臭いが伝わって来そうなしょぼくれ感と失うものがない状態で手を血に染めていく悲壮感が良く出ていたと思います。
あと、この監督、画面構成がエラい事上手。
冒頭、若狭湾で座礁した密入国船(貨物船なので結構デカい)と海岸に逃げのびた大量の密入国者をひと画面に納めた構図は実に映画的で圧倒されます。
花園神社で睨み合う三和会ヤクザと鉄頭一派の満ち満ち感。
画面一杯に犇く黒ずくめのヤクザが一斉に刀を抜いて迫ってくる密度と圧迫感。
クンフー抜きの暴力シーンは、ナイフ、包丁、鉄パイプ、日本刀によるリアル・ファイト(ショック映像としてのグロ描写も三池っぽい)。
日本文化、ヤクザ文化もよく勉強していて、外人監督にありがちな“トンデモ日本”描写が全くありません(スクリプト・コンサルタントとして参加している伊藤秀裕氏の功績か?)。
香港ノワールを新宿に持ち込んでVシネチックな話にして笑わないジャッキーを当て込んだら化学反応をおこしてエンターテイメントになりました。
「日本黒社会」がOKな人には気に入ってもらえると思います。
※参考:「極道戦国志・不動」→2008年3月31日
「人生たかが流れ星・・。荒ぶる魂たち」
→2009年10月9日
「ハングマン耽美編。許されざる者」→2009年11月3日