タイトルの通り(原題はCHRISTMAS EVIL)、ホラーである事は間違いありませんが、所謂スラッシャーやスプラッターとは趣が異なります。
“サンタコスプレの狂った男によるイヴの惨劇、血まみれナイト”なんてものを期待すると激しく肩透かしを喰らいますが、いい意味で裏切られました。
下手すると心に残ってしまうかもしれない佳作です。
「サンタが殺しにやってくる」
(1981年/ルイス・ジャクソン監督)
サンタが実在すると信じて疑わないハリー少年は、クリスマスイヴの夜にサンタコスプレの父ちゃんと勝負下着の母ちゃんがイチャつく姿を目撃して大ショック!
『うわあ、サンタさんがぁ!お母ちゃんがぁ!』
聖なるもののダブル淫行がトラウマとなったハリーはサンタ・フェチの立派な脳患いオヤジに成長。
サンタパジャマで眠り、トナカイメリーゴーランド目覚ましで目覚め、クリスマスソングを聞きながら、顎に塗ったシェービングクリームを髭に見立ててご満悦。
壁にも床にもサンタグッズ。近所の子供の私生活をピーピングしては、その行いを「良い子ノート」「悪い子ノート」に書き留める変態ぶり。
おもちゃ工場の中間管理職というお仕事はありますが、同僚に馬鹿にされる日々。経営者に夢はなく、幹部には心もない。
誰も子供に良質なおもちゃを与える事の大切さを分かっていない。だったら・・、
そうだ、僕がサンタになろう! ついでに悪い大人に天誅だ!
自作のサンタ衣装に身を包み、手作り&工場からガメたおもちゃを車に詰めていざ出発!
病院の子供たちを見舞い、教会の前で衆人環視の中、絡んできた大人3人の頭を手斧でかち割って瞬殺。
自分を馬鹿にしていた同僚は睡眠中に喉かっ捌いて神の元へ(サンタなので子供にはしっかりプレゼントを置いて行く)。
『探していた旋律を見つけたよ。しかも自分で演奏できる』
夢にまでみたサンタとの一体化を果たしたハリーですが、“サンタコスプレの殺人鬼”はTVを通じてあっという間に知れ渡り、ハリーは自警団に追われるハメに。
「サンタを殺せ!」
松明を掲げ、集団で追いかけて来る住民はまるでKKK。
最早悲劇的ラストしかないのか、と思ったところを詩的に掬う展開にしばし呆然。
唯一ハリーに理解を示す弟嫁がいつも真っ赤な服を着ているなど演出も細やかで、作り手がハリーに共感している事が伺えます。
拾い物・・かもしれません。