意図的に“007の偏差値貧乏化”を狙っているのは分かります。であれば、真面目なスパイ活動のシーンとかはいらなかったかな。
アーシア・アルジェントをヒロインに起用した慧眼には敬意を表します。
「トリプルX」(2002年/ロブ・コーエン監督)
スーツ姿のおっさんスパイが殺され、スカーフェイスなサミュエル・L・ジャクソンが、「やり方を変えないと駄目だ」、と言い垂れる冒頭は意図明白でいい感じ。
続いて、トリプルXことザンダー・ケイジ(ヴィン・ディーゼル)のお茶目な日常から、“無理矢理使い捨て傭兵スパイ選抜試験受験”に突入する導入部まではマズマズ(ちょっと平井和正の「死霊狩り(ゾンビー・ハンター)」っぽい)。
で、見事、試験に合格し、試用期間に入ってチェコへ飛んだあたりからなし崩しにグダグダな展開へ。
いやあ、そこいらへんは適当でいいから、とっととアクションに入ってくんねーかなーっと(←観ている方も作品に合わせて偏差値が極端に低くなっている)。
アーシアが出ているおかげで、かろうじて画面の緊張感が保たれていますが、これが別の小奇麗なだけの女優だったら“失敗した福笑い”のような張りも艶もない絵柄になっていたでしょう。
クライマックス近くになってようやく馬鹿満開なアクションのつるべ打ちになりますが、最終的な印象は、「ただ馬鹿になっただけの007」でした。
もうちっと不良っぽさと言うか、反体制な振る舞いがあれば。ザンダーくん、意外と組織に従順で。サミュエルが「こいつは(俺には)乗りこなせねぇ!」と言うくらいでないと。
弾丸を使い分ける特殊なリボルバーはちょっと欲しい…。