『おまえら。トルエン道は険しいぞ。俺はトルエンで世界を征服しようと思っている』
流石、翔兄ィ、広げる風呂敷が無駄にデカイです。
狭いボロアパートの一室でガスマスク着けてリポビタンDの空き瓶にトルエン詰めて、一休み。窓を外して(開けて、ではない)マスク取って「まだまだ暑いなあ」。ロングでもこの一言で哀川翔と分かる存在感。
そんな哀川や竹中直人を向こうに回して一歩も引けをとらない男、北村一輝。
「喧嘩の花道」「Full Metal極道」と三池作品を支えてきた無名の新人(当時)、堂々の主役抜擢。
日焼けし過ぎて赤剥けた肌に荒塩擦り込むようなヒリヒリ痛いドン詰まりの青春映画です。
「日本黒社会」
(1999年/三池崇史監督)
タイトルとは裏腹に日本人(役)はほとんど出て来ません。
中国の移民、アフリカの移民、中国人とのハーフ。
『龍ちゃん、覚えてる? 龍ちゃんが学校の頭〆て、誰も俺たちのこと“あいのこ”って呼ばなくなって。あん時、龍ちゃん、あいつの太ももにコンパス刺したんだよね』
呂龍一(北村)、弟の俊霖(粕谷亨助)、親友の張(田口トモロヲ)の3人はベトナム人バイク密売屋(大杉漣)から金を奪い、田舎を捨てて新宿・歌舞伎町へ。
中国人売春婦アニタ(李丹)、中国人マフィア、ウォン(竹中直人)トルエン売りのアフリカ人バービー。雑踏。混沌。どこまでも異国。
「こんなとこ、いられる訳ねぇだろ!」の一言で田舎を飛び出し、同じ台詞で都会(日本)から飛び出そうとする龍一たち。
ラスト、スタッフ・キャスト・クレジットを1枚の止め画で収める(読めません!)という余韻をぶった斬る荒業も、この映画に相応しい幕切れです。
無鉄砲な龍一の弟役で難儀なメに遭った粕谷亨助は、同じ年に同じ三池の「デッド・オア・アライブ/犯罪者」で中国残留孤児2世・龍一!(竹内力!)の弟役(ほとんど同一キャラ)で、やはり難儀なメに遭っています(合掌)。
写真(上)は黒社会三部作(「新宿黒社会」「極道黒社会」「本作」)を収めた海外版DVD。デジパック仕様の中ジャケは何故か田口トモロヲの写真ばかり(笑)。
確かに3本通して出演しているのは田口トモロヲただひとり。そうか、黒社会三部作は田口トモロヲのシリーズだったんだ。
※参考:「デッド・オア・アライブ/犯罪者」→2008年2月2日
「Full Metal極道」→2008年2月11日
「哀川翔、男劇場開幕。 極道黒社会 RAINY DOG」
→2008年9月18日
「大阪最強伝説 喧嘩の花道」→2008年11月4日