
東映の実録路線・大作路線の流れから見れば、役者もスケールも中途半端。結局“いつもの東映ヤクザ映画”に。
「日本の仁義」(1977年/中島貞夫監督)
中島監督としては、「やくざ戦争/日本の首領(ドン)」「日本の首領(ドン)・野望篇」の間(と言っても全部77年ですが)の作品、シリーズとしては、79年の「日本の黒幕(フィクサー)」(降旗康男)と共に日本三部作となるのですが・・・。
浮いています。本作だけ。
最大の要因は“佐分利信がいない”ことでしょう。「日本」という看板を背負うにはそれなりの人物が必要ですが、藤田進ではちょっと・・。
とは言え、時折光るキャラがいるので邪険にもできません。見所のひとつは珍しく理不尽大名ぶりを披露する菅原文太。
先代(藤田)の跡目を継いで組を与った文太が景気良く壊れていきます。
「あいつらまとめてダイナマイトで皆殺しにしちゃれ!」
渡哲也の石川力夫に比べたら実に可愛いものですが、“馬鹿な大将敵より怖い”の見本。
個人的イチオシは岡田茉莉子に代わって文太の本妻となる池波志乃と三流新聞社の記者、林隆三。
池波はしっとりとした女博徒として登場し、文太を岡田から奪っておきながら、文太が別の女と寝たと知るや、拓ボン連れて女のヤサに殴りこみ。
「アソコ縫い付けたるさけ、針と糸持ってこんかぁい!」
林隆三はいつも酔っ払っていて、組の若頭である千葉真一にディープキスをかますなど、狂言回し的一般人なのですが、最後の最後にキメ台詞を吐くので侮れません。
バーで林が千葉ちゃんを押し倒して唇を奪うシーン、本来なら「何しとんじゃワレ!」と止めに入るべき舎弟の志賀勝がニマァ~とした笑みを浮かべて眺めているのが印象的。
相変わらず昔ながらの侠客を演じる鶴田浩二も無駄に悲壮感振りまいていい感じ。
フランキー堺と岡田茉莉子のメロドラマはまるまるいりません。
※参考:「日本の黒幕(フィクサー)」→2011年1月17日