『ボクサーになるには生易しい事じゃ駄目だ。
お前に人が憎めるか?』
『憎めます!』
『言ってみろ、誰を憎める?!』
『親父を!お袋を!兄弟を!八重垣島を!沖縄を!
世の中全部だ!』
実写版あしたのジョー・・一体誰が観るのか存じませんが、んなもん観る時間と金があるんなら、こっち観ましょう。
「ボクサー」(1977年/寺山修司監督)
勝てる試合を投げ出して引退した元東洋チャンピオン・隼(菅原文太)。
足の障害を理由にジムから見放された若きボクサー・天馬(清水健太郎)。
家族を捨て(捨てられ)ストリップ小屋のポスター貼りで糊口をしのぐ隼に指南を請う天馬。目指すはフェザー級新人王。
“サンドバッグに浮かんで消える、憎いあんちくしょうの顔めがけ、叩け!叩け!叩け!”(作詞:寺山修司)
ピストン堀口始め歴代チャンピオンの悲惨な末路を淡々と読み上げるナレーション、ファイティング原田、海老原博幸の載冠映像、走りこむ世界ジュニアフライ級チャンピオン具志堅用高。そして具志堅の世界戦に集う原田、海老原、柴田、ガッツ、西城、輪島。
“それでも好きなんだ!”というどうしようもないボクシング愛が迸っています。
近所の洋食屋に入り浸る自分の人生を嘘で固めた天井桟敷の人々が実にアングラでいい感じ。
清水健太郎の肉体にはボクサーとしての説得力があります。
「探偵物語」には清水健太郎がボクサーに扮した「逃亡者」というエピソードがありますが、地上波欠番。復活を望んでおりましたが最早完全に放映不能でしょう。
もう一花咲かせて欲しかったなあ・・(いやまだ終わったわけじゃない。この映画にもエンドマークはなかったじゃないか。弾ぁまだ残っちょるぞ健太郎)。