ついに。時代劇専門チャンネルで「必殺仕置人」がスタートしました。
初放送から38年が経過しているというのに、このテンション、この面白さ。
特に初回は、深作欣二監督による必殺仕掛人第1話「仕掛けて仕損じなし」、工藤栄一監督による新・必殺仕置人第1話「問答無用」と並ぶ大傑作です。
火付け押し込み殺人犯“闇の御前”が捕縛され斬首。しかし、小塚原に晒された首を見たお咲は、それが郡山から一緒に出稼ぎに来た自分の父・松造と確信します。
謎の男たちに襲われたお咲を助けたのは観音長屋の棺桶職人・錠(沖雅也!)。
「冗談言うなよ!あの人はメスと名のつくものは猫の子一匹寄せ付けないんだよ!」(by鉄砲玉のおきん@野川由美子)
確かに。(当時は知る由もなかったですが、ブラックな楽屋オチだったんでしょうねえ)
八丁堀同心・中村主水(藤田まこと)、骨接ぎ屋・念仏の鉄(山崎努!)らをテキパキと紹介しつつ人間関係その他をさりげなく説明。一分の隙もありません。
中村主水が、すれっからしを装いつつもまだ心のどこかで“正義”というものを信じているというキャラ設定が面白い。
「鉄、俺ぁ怖えんだ。正しいことなんかねえ。綺麗なことなんか、この世の中にはねえ。そう思いながら、心のどこかでそれを信じて、十手を握ってきたんだ」
闇の御前が生きていると踏んだ主水は、伝馬町の牢名主・天神の小六(高松英郎)に協力を仰ぎます。
「あの事件の担当は的場だろ。何故奴に聞かん?」
「親分の方が正直だと思ったからよ」
確かに闇の御前は生きていました。豪商・浜田屋の主となって(大滝秀治二役)。後には与力・的場、更にその後には奉行・牧野備中守の姿が。
全ては浜田屋の財力をバックに時の政権に就こうという備中守の策謀でした。
『どうにもこうにも我慢できねえ。なにやってんだ、さっさとバラしゃいいじゃねえか、バラしゃ』
『それだけじゃ足りねえよ』
『それじゃ、細切れにして肥ダメにたたき込んでやるとか』
『まだまだ』
「病気持ちの夜鷹抱かせて鼻っかけにしてやるとか」
『まだまだ』
『あー、なんだかゾクゾクしてきやがった。生きてるってのも満更じゃねえな。さあて、あの外道ども、どう料理してくれようか』
『まだまだ』
『ばかやろう、まだなんにも言ってねえや』
『いきるな、いきるな。男三十過ぎていいかっこしようなんざ、落ち目になった証拠よ』
最早主水に迷い無し。観ているこっちもゾクゾクしてくる名シーンです。
仕置料はお咲が持っている(と錠が言った)30両。
『おら、金なんか一文も持ってねえだ!』
『こういう事は金でやっちゃいけねえんだ!』
しかし、お咲は身を売って金を工面。ラスト、錠の取り分を棺桶に投げ出す主水たち。
『俺たちはな、今度みたいな仕置を、これからも続けていくことにした』
『こいつは先の長い、汚え仕事だ……向こうがワルなら、こっちはその上をいくワルにならなきゃならねえ。俺たちゃワルよ。ワルで無頼よ。磔にされても仕方ねえくらいだ。なあ、鉄』
『ああ』
『だがな、こう悪い奴等をお上が目こぼしするとなりゃあ、そいつを俺たちがやらなきゃならねえ。つまり、俺たちみたいな、ろくでなしにしかできねえ仕事なんだ』
『おめえみたいに、世のため人のためなんて言ってたら、すぐにへたばっちまうんだよ。俺たちと一緒にやる気があるんだったら、その金とれ。ねえんだったら、どっかへ消えちまえ』
張り詰める沈黙。金を鷲掴みにして懐に収める錠のストップモーション。仕置人の誕生です。
池波正太郎の原作を離れたオリジナル・ストーリー。真の必殺はここから始まったと見るべきでしょう。