『見ろ、タカヤ。あれがお前に無いものの全てだ!』
『お、お姉様が鉄下駄を!!』
日高のり子が、モニターから目を逸らし、膝をつねりながら(そうしないと笑ってしまう←コメンタリーより)アテたオープニングの一言。
宇宙怪獣迎撃パイロットになるために、鬼コーチの下で特訓するドジでノロマな亀。憧れのお姉様はレオタード姿で石段を鉄下駄で・・。
どう見ても馬鹿アニメです。よもやこれが体液搾り出す男泣き劇場になろうとは、この段階では誰も想像しなかったでしょう。
(2006年/庵野秀明監督)
改めて88年のオリジナル版(3時間)を観た上で劇場版(95分)を鑑賞しましたが、編集が絶品なので、ほとんど違和感がありません。
唯一、ユング・フロイトのエピ削減が、物語の厚みを損ねているかもしれません。
努力と根性のタカヤノリコに対し、精進不要・仲間無用の天才少女ユング(アスカのプロトタイプですね)。
彼女が、ノリコ、カズミ(お姉様)と接し、仲間と同じ時を過ごす歓びを知る過程は本作のサイド・ストーリーであり、クライマックスの伏線でもあるので、そこだけが残念でした。
木星を圧縮したブラックホール爆弾で宇宙怪獣を銀河ごと飲み込む「カルネアデス計画」。しかし、あと一歩の所で縮退連鎖が起きず不発。
『奇跡は起きなかったか・・』
『奇跡は起きます!起こしてみせます!』
バスターマシン1号の縮退炉を暴走させ自らを導火線としようとするノリコ。2号の縮退炉を脱出用にと共に特攻するカズミ。そして量産型シズラー・ブラックで後を追うユング。
『あたしも行くわ』
『シズラー・ブラックでは木星の重力に耐えられないわ』
『構わないわ』
『勘違いしないで。私たちは死にに行くんじゃないのよ』
『だって、こんな所にいたらいつ地球に帰れるか。何十年、何百年…もう同じ時は過ごせないのよ!』
『でも、皆は同じ時を過ごせるわ』
『さよならは言わないわ。行ってきます』
『帰ってきたら、おかえりなさいって言ってあげるわ』
その約束が果たされるのは1万2千年後・・。
もう台詞のことごとくがツボ。ほぼ全編泣き笑い。ガイナックス・アニメの頂点で、エヴァはこの残滓のような気すらしてきます。