デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

中村主水大殺陣! 必殺!Ⅲ 裏か表か

イメージ 1
中村主水が斬る!ズタボロになりながら斬る!

殺陣の質はちょっと難有りですが、セコ突き主流の主水が正面から大立ち回り、机龍之介ばりな死体の山を築くハードボイルド時代劇。

「必殺!Ⅲ 裏か表か」(1986年/工藤栄一監督)

一斉捕り物・捕縛シーンにタイトル・クレジットが被る監督お約束のオープニング。

国の動脈である金の流れを仕切る両替商・枡屋(とその背後にいる両替商肝煎・真砂屋)と事を構えた為に、罠に嵌り窮地に立たされる主水。

切腹を強要され、刺客に狙われ、同僚からは殉職を画策されるという四面楚歌の中、満身創痍で「生憎だが、俺はこんな事じゃ死なねえよ」と嘯く主水がかっちょいい。

更に、公開当時放送中だった「必殺仕事人Ⅴ・激闘編」のレギュラー陣を次々殉職させるという掟破りのハードコア演出(一応、TVシリーズの後日談という位置づけ)。

参(鶴瓶)は殺し業を出す前に豪雨の中、斬殺&斬首。

竜(京本政樹)、壱(柴俊夫)も大殺陣の中、滅多切り&滅多刺し。

秀(三田村邦彦)は得物のかんざしを折られ、持ちなれぬ刀を振り回すなど、必殺の特徴である殺しの様式美を完全封印。

BGMのほとんどが「必殺仕置人」「新・必殺仕置人」から流用(個人的に好感度うなぎ登り)。極め付けがエンディング・テーマ「やがて愛の日が」(必殺仕置人主題歌)。

完璧な選曲です(そもそも「必殺仕事人Ⅴ・激闘編」の基本設定は両「仕置人」リスペクトなので当然と言えば当然)。

紅一点華を添える松坂慶子の緋牡丹博徒な佇まいは流石の迫力。

残念なのは3時間あったと言われる初期バージョンを大鉈振るう編集で2時間強にしたため、一部エピソードが尻切れになっていること。

特に枡屋(成田三樹夫)の最後が全く以って不明なのはちと歯がゆいです。

あと台詞に「汚名挽回」という致命的なミスがあるのが画竜点睛玉に瑕(3人掛かりで脚本書いて何でこんな事が起きる?)。