実録(瀬戸内シージャック事件)を過剰なセンチメンタリズムで綴るのはやっぱり無理がありました。
裕次郎の甥、サラブレッド良純、痛恨のデビュー作。
「凶弾」(1982年/村川透監督)
石原良純の演技がままならないのは致し方ないとして、やはり本作の問題は主人公サイドに必要以上の感情的肩入れをしてしまったことでしょう。
少年院帰りの3人(良純、古尾谷雅人、山田辰夫)が“本当はいい奴なのに世間の偏見で何をやってもうまくいかない”様子がこれでもか、と描かれます。
そして、“警察の権力笠に着た不当な暴力”を契機に更なる犯罪に走るが、当局は事実を捻じ曲げる情報操作で、「始めに射殺ありき」な状況形成を画策し・・。
良純がフェリーをジャックするのは、上映開始1時間20分後。それまでは青春映画です。
機動隊狙撃班が編成されますが、何とこの中に金子正次の姿が!
良純には悪いが、金子と配役逆にしてハードボイルド路線に徹していたら・・(主役は古尾谷でいい)。
最強トリオ『丑三つの狂い咲きサンダー竜二』じゃないですか(嗚呼、全員故人だ)。
もしくは狙撃手・金子を主役にして、犯人射殺に至る葛藤を描く作品になっていたら(瀬戸内シージャック事件は、戦後初の犯人射殺による人質救出事件)・・。
見所が“テキサスに撃たれるマイコン”という顔合わせだけってのは寂しいなあ。
良純の役名は“荒木英夫”で祖父が加藤嘉。車椅子に乗った加藤が「ひでおぉ!ひでおぉ!」と叫んでいると何か別の映画を観ているような気になります(出来は雲泥ですが)。