『あたしにも聞こえたわよ。大事なものが消える音。パチン!じゃなくてドッカーン!だったけどね』
社会派ではありません。暗黒エンターテイメントです。
「告白」(2010年/中島哲也監督)
“復讐モノ”(と聞いただけでごはん3杯はいける)で大切な事は、情けをかけない事、復讐は空しいなどと勝手に自己完結しない事、慌てず騒がず弱みを見せず冷静沈着に獲物を追い詰めるハンターの冷徹さを以て目的を完遂させる事。
ちょっとでも隙や躊躇いを見せたら、あるいは正義や人道などという“在りもしない”幻影にすがったら、その瞬間、お話は(私にとって)ゴミと化します。
松たか子。合格、いや満点です。
「女囚701号 さそり」の梶芽衣子、「人魚伝説」の白都真理と肩を並べる復讐の女神。
ストーリーは割愛(知ったらつまらん)。雰囲気を例えるなら、“世界の中心でアイを叫んだ復讐者に憐れみを”ってな感じでしょうか。
タチの悪い鳥獣戯画のような中学校。熱血は馬鹿の代名詞(金八嫌いだろ?)。
ストーリーを登場人物のモノローグで展開させ、スタイリッシュな映像がこれを補完するという構成が“映画としてどうよ?”という理由から本作をワーストに推した「映画芸術」の慧眼は確かに映画評論の良心ではあります。
ではありますが、本作に限ってそこはどーでもいいのです。どの語り口をチョイスするかは監督の自由ですから。
社会的道義感から、松たか子の行動を“行き過ぎ”と非難する人がいるかもしれませんが、彼女が行っているのは復讐であって正義ではありません。
木村佳乃が口にしているように松たか子は悪魔です。迷い無き悪魔。
だから素晴らしいんじゃないですか。
表現的にいらんシーンは多々あります(特にKCのThat’s The Way)。もうちっと削ってソリッドにしたら向かうところ敵無しな仕上がりになったと思います。