デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

無垢なる者を待つ岩山。 ピクニックatハンギングロック

イメージ 1

100万年かけて現在の形になった岩山ハンギングロック

「100万年も待っていたのね、私たちが来るのを」

1900年2月14日。オーストラリアの寄宿舎制女学院アップルヤード女学院の生徒は課外授業でハンギングロックへ出かけました。

校長からの注意事項は、町を出るまで手袋を外さぬ事、毒蟻に注意すること、

そして、神の嫉妬に巻き込まれぬ事

最後のひとつは劇中の台詞にはない宣伝用コピーですが、良く出来ていると思います。

 

「ピクニックatハンギングロック
(1975年/ピーター・ウィアー監督)


この課外授業中に3人の女生徒と1人の女教師が忽然と姿を消した、という実話(←多々異論有り)の映画化です。

冒頭、寄宿舎の朝。光と風に祝福される妖精の如き少女たち。

ちょっとハイキーな映像の中で、また見ぬ恋を語り(それは同性愛的告白でもあり)、一列になってコルセットを絞め合い・・正に無垢なるロリータ。

失踪事件に関しては何の解決も謎解きもありません。

ただ、意図的に散らされた気になる描写はあります。

教師、御者の時計が揃って12時で停まってしまった事(強力な磁場)。

最後に目撃された女教師がスカート無しのコルセット姿だった事。

失踪後、唯一生還した少女アーマの着衣にコルセットがなかった事。

夢遊病のように岩の裂け目に入っていく3人の少女(ミランダ、マリオン、アーマ)。取り残されたイーディスは何を目撃して絶叫にも似た悲鳴をあげたのか。

原作はジョアン・リンゼイって人が1967年に発表した小説(!)で、作者自身「事実かフィクションかを伝える事はできない」などと言い垂れており、どこまで本当なのかは藪の中。

原作発表当時、失踪の核心に触れる描写はカットされており、作者の死後に公開されています。概要を見ただけですが、実に超自然的な、あるいはXファイル的な、見ようによってはクトゥルフ的な展開になっており、カットしておいて正解だったかな、とは思います。

少女の美しさに眼を奪われていると、何が何だか分からないうちに終わってしまい、狐につままれたような気分になりますが、あちこちにヒントが隠されているので、繰り返しチェックしてみるのも一興かと。