梶原一騎、それは昭和男子の通過儀礼。
「タイガーマスク」「あしたのジョー」「巨人の星」「キックの鬼」「空手バカ一代」そして「愛と誠」。
これら全てを素通りした人がいたとしたら、それはそれで豪傑です。
恐らく手塚治虫が持ち得なかった全てのものを持っていたのが梶原一騎だったのではないかと思います。
実弟・真樹日佐夫の目を通して見た梶原一騎と二人が駆け抜けた昭和という時代。
(2003年/三石富士郎監督)
ひらがなで書くとつい“捨て頃”と脳内変換されてしまうかもしれませんが、素手喧嘩のことです(ゴロはゴロマキ権藤のゴロね)。
三兄弟となっていますが末弟・日佐志はオマケ程度。長兄・朝雄(梶原)と次男・真士(真樹)の関係を中心にまとめられています。
真樹役は哀川翔(いい感じに似ている)。梶原役には奥田瑛二(喧嘩の演技は駄目駄目ですが、机に向かう横顔とかはそれっぽい)。
真樹日佐夫本人は何と大山倍達に。
『他の役者が演じたら必ずどこかからイチャモンがつくからな。俺がやればどこから文句をつけられても相手に会っちまえばいいわけだから。ま、プロデューサー救援だな』(真樹日佐夫:談)
“会う”は“〆る”の同義語と思われますが、流石先生、表現が奥ゆかしい(笑)。
少年マガジン初代編集長・牧野武郎に内田裕也が。顔が似ているんだそうですが、あの髪型のまま登場はないでしょう。
個人的には梶原晩年のスキャンダル(つのだじろう監禁事件とかアントニオ猪木監禁事件とか)や作品個々のエピソードとのリンクなどにも時間を割いて欲しかったですが、昭和の事件をコラージュしながら、兄弟の関係性を描く構成はちょっと文芸大作の香りがして良かったと思います。
逮捕、大病を経て、白いスーツ姿でがっくりとうなだれるポーズは正に“あの”シーンの再現でうるっと来るものがありました。