“グラン・ギニョル”という単語を初めて知ったのは、高校生の頃。
ブライアン・デ・パルマ監督の「フューリー」(写真下)を“残酷人形劇(グラン・ギニョル)”と形容した評論を読んだ時でした。
このなんとも耳にまとわりつく嫌ぁな響きに魅せられて幾星霜。
確かにギニョル(Guignol)は人形劇を示すフランス語でしたが、頭にグラン(Grand)が付くと別の顔、第二の人格が頭をもたげて来ます。
19世紀末、パリに存在した小劇場グラン・ギニョル。そこでは夜な夜な、気の触れた科学者が、嫉妬に狂った男が、姦計巡らす女が、人間を刻み、溶かし、大量の血糊を撒き散らしておりました。
1962年に映画等の新興勢力に圧される形で閉鎖。以後は伝説の住人となります。
恐らく「パラノイア百貨店」が日本でグラン・ギニョルを継承した唯一の劇団だったのではないでしょうか。
※「東京グランギニョル」の芝居を観た事はないのですが、残酷さを美少女・美少年といった耽美趣味で中和しているというwikiの解説を読む限り“違う”のではないかと。
なので、パラノイア百貨店主宰の山崎一氏がNOVAのCMに出てきて「アイム・ホーム!」と言い垂れた時はのけぞりましたね。
『き、君、さっきまで人間切り刻んで返り血浴びまくってたじゃん!』
さて、枕が長~くなってしまいましたが、本題。本日ご紹介するのは、本家グラン・ギニョルの代表作をまとめた戯曲集。
「グラン=ギニョル傑作選-ベル・エポックの恐怖演劇」(水声社/真野倫平翻訳)
代表作七篇を収録し、更に主要作品60篇の梗概を掲載するという豪儀に仕様。
「SAW」だの「ホステル」だの人でなしな映画が幅を利かせている今日の視点から見れば可愛いものばかりですが、当時としてはかぁなりショッキングだったのではないかと思います。
嫉妬から硫酸をかけられ顔面が爛れ、視力も失った男の凄絶な復讐劇「闇の中の接吻」が個人的にはお気に入りです。
熱帯夜のお供に如何でしょうか。