デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

原作は「たがや」? あの笑撃ラストを推理する。 模倣犯

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終盤までは普通に駄目駄目な映画です。

時間軸をいじった作品としては多分最低の編集。

個々のキャラクターがぶつ切れで登場するので、出てくる度に“ああ、そう言えば出てたね、君”。

群像劇でありながら、話走らず、エピ絡まず、動機分からず、キャラ立たず。

風呂で屁をこいたようなへっぽこぴーなOP曲(タカハシタク)、まさかそれを“スタイリッシュ”だと思ってんじゃねぇだろうな?、な恥ずかしい映像、イメージ貧困にも程がある“猟奇”監禁シーン、etc. etc.

しかし、そんな不満もラストの首花火で帳消し(普通、こういう表現は一気に巻き返した時に使いますが、真逆です。近所のおばさんの話し声がうるさいと文句を垂れていたら、核ミサイルが飛んできた感じ)。

模倣犯(2002年/森田芳光監督)


絵柄を説明しないと話が進まないので、以下ネタバレです。

猟奇大量殺人事件を読み解く事でマスコミの寵児となった経営コンサルタント(実は張本人)・網川浩一(愛称ピース/中居正広)は、テレビの生放送で被害者の遺族兼ルポライター・前畑滋子(木村佳乃)と対峙。

ここで前畑は、今回の惨劇は過去に起きた事件の模倣に過ぎないと、網川の自尊心を傷つける発言を。

網川はこれをブラフと見抜きながら、「あれは模倣なんかじゃない、僕のオリジナルだ!」とあっさり告白(ええ!)。

そして問題のシーン。

カメラに向かってピースサインを出した網川が景気良く自爆

まず首がどーんと千切れてドリフの首チョンパの要領で舞い上がり、空中で頭部が大爆発。

は一滴も噴き出さず、黒い灰のようなものがスタジオ中に舞い踊る悪魔の花咲か爺さん。

前後の繋がりから察するに、CGでもホログラフでもダミー人形でもなく、網川本人が爆発しているようです。

作品のカラーから言って、「デッド・オア・アライブ」で哀川翔が背中からバズーカ出したり、竹内力が魂を投げたりというのとは根本的に質が違います。

疑問の大洪水ですが、まず爆発の原因は何だったのか。明らかに自殺なので、事前に爆薬か何かを仕込んでおいたのでしょう。

首も頭も内側から爆発しているので、相当大掛かりな手術が必要だったと思われます。

首だけを飛ばして隣にいた人には傷ひとつ負わせていないので、完璧な計算に基づく爆発調整をしたのでしょう。

起爆装置がどこにあったのかも気になります。恐らくピースサインをする筋肉の動きに連動して体内スイッチが入るよう改造されていたのでしょう。

更に、本来なら血と肉片が雨あられとなる所、黒い灰が舞っただけという事から、実は網川は人間ではなかったという衝撃の結論に至らざるを得ません。

ついでに言えば、生放送中にロケット発射された網川の頭部を正確にTVカメラが追っていたのは、綿密な事前打ち合わせの賜物でしょう。

原作者・宮部みゆきは、試写会を途中退席し、監督との面談を頑なに避け、ようやっと実現した対談でも沈黙を通したそうです。

そこまで原作者を激怒させるとは…(恐るべし、森田芳光)。

実は本作の原作は宮部じゃなくて、古典落語「たがや」だったんじゃないでしょうか。