1997年7月は「もののけ姫」と「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」が同時公開されるという、アニメファンにとっては盆暮れ正月が一緒に来たような僥倖の月でした。
私はエヴァ初日(もののけ2週目)に、好きなものは味が混ざってもいいからとっとと口の中へ、という「我慢って何?」な卑しがり精神に基づいて2本を梯子。
破綻に破綻を上塗りした「うわあ、なんじゃこりゃ」なエヴァの衝撃に比べ、もののけの第一印象は『これってナウシカの縮小再生産じゃん』。
意図的に深堀を避けているとしか思えないキャラ造型と、敢えて特徴の無い声をアテているとしか思えない俳優(非声優)の起用が、フラットな予定調和を渾身で後押し。
以来、“再見の必要無し箱”に入っておりましたが、14年振りにテレビで再会(7月1日、日テレ金曜ロードショー)。
時の流れとは恐ろしいもので、割と面白く観れてしまいました(にしても画が汚ぇな。テレシネか?)。
森が主役で登場人物は全員狂言回しだと思えば、“エコじじい”の面目躍如たる神話性を湛えた物語にはなっていると思います(ストック・キャラクターを配した一種の能みたいなものだと勝手に理解しました)。
強いて主役を選ぶとしたらおトキさん(声:島本須美←ほとんど唯一の声優)でしょうね。
『生きてりゃ何とかなる!』という台詞は糸井重里が現金喰らってケツからひり出した“生きろ!”というコピー(アシタカの台詞でもある)より遥かに説得力がありました。
※公開当時、この糸井コピーを真に受けて「誰かに生きろと言ってほしかった」とかいう自分探しの甘えん坊が大量に沸いて出たのには辟易しましたね。
「人間は嫌いだ」と言って森へ帰るもののけ姫と、「傷ついてもいいから、他人のいる世界の再構築」を願ったシンジ。
片や社会を、コミュニティを描く全共闘世代の監督と、個の内面だけを執拗に描く次世代の監督。
勝負は最初からついています。