デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

勝つ戦争ならやってもいいのか!? 激動の昭和史 軍閥

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毎年恒例の8月15日シリーズも数えて4回目。今年の作品は、

「激動の昭和史 軍閥(1970年/堀川弘通監督)

226事件を端緒とする軍部の政治介入から大東亜戦争突入、泥沼の戦局をじっくりと描きます。

軍閥と銘打っていますが、実態は東條英機暴走絵巻”

東條英機小林桂樹)がタイラントに変貌していく過程がドラマの縦軸ですが、本作の本質はむしろ横軸として設定された毎日新聞記者・新井五郎(加山雄三の存在でしょう。

戦線の実態と大本営発表のあまりの落差に驚いた新井は紙面で戦争の真実を訴えます。

『新聞が事実を隠すようになったら日本は終わりだ』(同僚・岸田森

(つまり、終わってるって事ですね、日本は・・)


この記事が東條の逆鱗に触れ、新井は懲罰招集の対象に・・。

しかし、新聞記者としての矜持と正義感も特攻隊員(黒沢年男)の叫びの前には無力。

『開戦の時、貴様ら何と言った? 討て皇軍だ、聖戦だ。万歳、万歳。さすが東條さんだ。鬼畜米英撃滅だ。そう言ったのはどこのどいつだ! 日本を好戦的にした、戦争好きにしたのは貴様らだぞ! 負け戦だからやめたほうがいい、たったそれだけの事を言って何が立派な事だ! 勝つ戦争ならやってもいいのか!? 貴様ら東條東條、勝ってる時はベタ誉めしやがって、負けてくると皆東條のせいと言いやがる。貴様らに責任はないのか!?』

(聞いてるか、朝日新聞


軍部の暴走を糾弾する“正義”として新聞記者を設定・・と思わせて、その共犯性を叩く…さすが傑作「黒い画集/あるサラリーマンの証言」撮った人です。

サイパン玉砕の際に兵士が歌う「海ゆかば」…聴けば聴くほど凄い歌詞だ。

本作の続きは勿論「日本のいちばん長い日」。役者が被りまくっているので、立て続けに観ると混乱します。ご用心。

余談ですが、社会人成り立ての頃、営業所の先輩が大きく右にカーブした人でした。

「あ? 第二次世界大戦じゃねぇだろ、大東亜戦争だろ」
「た、太平洋戦争じゃ駄目すか?」
「それじゃあシナ事変が含まれねぇだろ!(鉄拳制裁)」

因みに私はこの会社で“懲罰召集”ならぬ“報復人事”というものを身を以って経験いたしました。

※参考:
「日本のいちばん長い日」→2008年8月15日
「俺たちは人間じゃない、部品なんだ!人間魚雷回天」→2009年8月15日
「馬鹿野郎!馬鹿野郎!馬鹿野郎! 肉弾」→2010年8月15日