セットと書割のコロシアムを肉体の躍動感ひとつで“本物”に変える筋肉の錬金術師。
これは、肉体言語による異文化コミュニケーション映画です。
「ドラゴンへの道」
(1972年/ブルース・リー監督)
ドラゴン・レースのアニメに「う!う!」という叫びが被る軽快なテーマが最高(チャウ・シンチーが「少林サッカー」のオープニングでリスペクトしまくっています)。
舞台はローマ。主人公タン・ロン(ブルース・リー)は空港で言葉が分からず右往左往。
ローマに来た目的は知人が経営するレストランを地上げ屋から守る事(海外ロケまで敢行した割りには話のスケールが小さくないか、リー?)。
店では従業員がカラテの練習。「日本の武道なんて(やりたくない)」という同僚に、リーは「流派は関係ない」と一言。
クライマックス、空手の達人チャック・ノリスと対決の際、直線的な攻撃では勝てないと悟るやフットワークを駆使した柔軟な動きに変えるリー。
そしてチャック・ノリスも見よう見真似でフットワークを使い出す・・ひょっとしてジークンドーの極意「水になれ」(水は入る器によって形を変えるが、水としての本質は変わらない)とは、こういう事なのでしょうか。
本作はリーのコメディ・リリーフが新鮮でしたが、最初のアクション・シーンまで30分以上かけるのはバランス悪すぎ(「燃えよドラゴン」の安定感は、冒頭でリーが達人であるという事を表現している事が大きいと思います)。
アクションも、己の肉体が動きさえすれば“絵”になる事を熟知しての演出だと思いますが、やや直線的で冗長(ダブル・ヌンチャクは大興奮でしたが)。
この辺り、肉体だけに頼らず、周りにあるものなら菜箸1本でもアクションの(そしてコメディの)ネタに使うジャッキー・チェンとのアプローチの違いが見えて興味深いです。
この頃のノラ・ミャオの可愛らしさは抜群。もちっと活躍させて欲しかったですね。
★ご参考