観光地に必ずある顔出しパネルを思い浮かべてください。土地ゆかりの偉人やキャラクターの顔の部分に穴が開いているアレです。
裏に回って穴から顔出してハイチーズ。あんな恥ずかしい写真撮りたがる奴がいるのかと思って見ていると、意外に利用されているんですね。
あれの逆を考えてみましょう。
まずは、ブルース・リーの実寸大顔写真を用意します。
これをチョキチョキとハサミで切り、鏡に貼り付けます。で、この写真に自分の顔が重なるような位置に立つと・・おお、俺ってブルース・リー?
CGも光学も裸足で逃げ出す究極のアナログ合成。
後にも先にもこんな凄まじい特撮(?)、ここでしかお目にかかれません。
「死亡遊戯」(1978年/ロバート・クローズ監督)
ジークンドーの強さを示す為、五重塔各フロアで待ち構える強豪と異種格闘技戦を繰り広げつつ、最上階を目指す・・。
当時発売されたノベライズでは、家族を人質にとられて戦いを強いられていたような設定だったと記憶していますが、リー本人が生前に撮影したのはこのクライマックスシーンのみ、というのは皆さんご存知の通り。
このフィルム(OKテイクで35-40分あったようですが、実際に使われたのは13分程度)で何とか金儲けができないか、と考えた末に無理矢理搾り出した辻褄あわせが本作の全てです。
アクション俳優ビリー・ロー(ブルース・リーですが、本人あの世なので、タン・ロンその他そっくりさん多数競演)と、彼に終身契約を迫る国際シンジケート(手広い虎の穴)の攻防。
劇場に詰め掛けた客の多くは“ああ、もう分かったから、とっととブルース・リー出せや、コラ”と思いつつ、1時間20分の荒行に耐えたのでした。
そしてクライマックス。五重塔は中華屋ビルに、ジェームス・ティエン、チェン・ユアンと3人で最上階を目指すという設定はリー1人に変更されてしまいましたが、最早そんな事は大事の前の小事。
ダン・イノサント(カリ←棒術)、池漢載(合気道)、カリーム・アブドゥール・ジャバール(空手)との3連戦がモヤモヤの全てを薙ぎ倒してくれます。
その後は出来の悪い蛇足ですが、向こうにも“オチをつける”という事情があるので、広い心で見守ってあげましょう。
にしてもジョン・バリーのテーマ曲は素晴らしい。新規製作部分で唯一絶賛に値する仕事をしています。
※参考:「黙って未編集フィルムだけ見せてくれ。死亡的遊戯」→2009年3月8日