出番一瞬にもかかわらず、登場と同時に場をさらう・・やはり松田優作のオーラは半端ありません。
アテられて割り喰う格好になりましたが、甘ちゃんな不良からニヒルな大人に脱皮中の舘ひろしもなかなかです。
この頃の彼の眼はまだ妖しく吊り上っていました。
「薔薇の標的」(1980年/村川透監督)
80年と言えば、舘ひろしは「西部警察PartⅠ」、松田優作は、遊戯シリーズ完結編「処刑遊戯」、「蘇える金狼」の翌年。互いに脂ノリノリベタベタの季節です。
監督は同年「野獣死すべし」という異形の傑作をモノにしますが、翌81年の「獣たちの熱い眠り」(主演:三浦友和)を観る限り、「野獣~」が例外で、本作から「獣たち~」にかけての流れこそ村川ワールドのような気がします。
お話は至ってオーソドックス。
麻薬の取引で下手打って4年の役を喰らった舘ひろしが、ようやく仮釈放。4年前、取引現場を襲って金とブツを奪い舎弟を殺した奴は誰だ。そして、俺たちを売った奴は・・。
横浜を舞台に、石段カーチェイスなど恐らく今日では撮影許可が下りないであろうアクションを披露。
ガン・アクションにも力が入っていますが、ダブル・アクションのリボルバーをシングル・アクションで操作したり(弾が切れるとカシャカシャとダブル・アクションになる)、オートマチックを手動排莢したり(火薬に薬莢飛ばすだけのパワーがなかったのか、一部アシスト的にフレームを手動スライドさせている)、「ん?」なシーンも多々。
遊戯シリーズと違い、「仲間」要素の強いウェルメイドな仕上がりです。
脇は佐藤慶、中島ゆたか、沢たまきと結構豪華(個人的にはナンシー・チェニーが出ていたのが嬉しい)。
音楽は意外や大野雄二ではなく羽田健太郎でした。
シリーズ化はされませんでしたが、味わい深い一編ではあります。
※参考:「最も危険な遊戯」→2008年1月5日
「追悼・佐藤慶。野獣死すべし」→2010年5月7日
「りりィ×優作×オールド・クロウ。処刑遊戯」
→2010年10月8日
まだ君の眼が吊り上っていたあの頃…。 薔薇の標的
『ハマのミュージシャン舐めんなよ』