デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

上原が叩いて砕く原風景。 怪奇大作戦/霧の童話

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怪奇大作戦チャンネルNECOで絶賛放送中)と言うと、どうしても佐々木守脚本×実相寺昭雄演出作品がクローズアップされてしまいますが、シリーズ通しての立役者はやはりこの人ではないかと思います。

脚本家:上原正三

帰ってきたウルトラマン」では、繰り返し執拗とも思える怨嗟を込めて東京を破壊し続けた人ですが、怪奇大作戦でも日本の原風景に横殴りの鉄槌を喰らわしています。

怪奇大作戦・第12話/霧の童話」

(1968年12月1日放送/上原正三脚本×飯島敏宏監督)


新日本紀行に出てきそうな自然に溢れた山間の集落、鬼野村。ここは今、道路建設外資系の自動車工場誘致による土地買収問題で揉めに揉めていました。

誘致に賛成する若者と故郷に固執する老人たち。

やがて、霧の夜に賛成派の若者を襲う落ち武者の亡霊が出没。老人たちは自然破壊に怒った亡霊の祟りと騒ぎますが・・。

SRIは三沢(勝呂誉)を現地に派遣。村を一望する丘の上(地蔵が目印)がお気に入りの少年・健一と心通わせながら事件を調査。

お察しの通り、落ち武者は老人たちのコスプレ。簡単にバレなかったのは、メンバーの中に第二次世界大戦時の毒ガス部隊(石井部隊の事か?)にいた者がいて、霧に紛れて神経ガスを流していたから。

ラクリがバレて逮捕される老人たち。ここで終わってもお話としては十分成り立ちます。

しかし、上原はこの後にとんでもない後日談を加えます。

鬼野村に集中豪雨。鉄砲水で村全滅

深夜、濁流となって山肌を削り、村を襲う土石流(特殊技術:的場徹)と在りし日の村ののどかな風景を交互に見せる鬼演出。

「これで、土地買収はかえってスムーズに進むかもしれないな」
「そして堂々たる鬼野“市”が誕生する・・」

私が本当にショックを受けたのは実はこの後。

車が走り、工場が立ち並び、煤煙と排気ガスを撒き散らす工業地帯。省みられる事無く捨て置かれた地蔵とその傍らに座り込む作業服姿の疲れきった男。

まさか彼は、三沢と心通わせた健一少年の成れの果てなのか?!

それはちょっと悲し過ぎやしないかウエショー?(と思ったら脚本段階では、健一少年も鉄砲水の犠牲者となっていたらしい・・どっちにしても悲しいぞウエショー!)

※参考:「東京破壊魔人・上原正三帰ってきたウルトラマン」→2009年10月7日