デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

寄ってたかってぶち壊し。 砂の器[テレビ朝日]

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かつて、「太陽にほえろ!」に、エド・マクベインの「キングの身代金」をベースにしたエピソードがありました(571話「誘拐」)。

天下の黒澤作品(天国と地獄)を向こうに回しての大博打でしたが、犯人との攻防戦を軸に据えた刑事ドラマとして見ごたえのある作品だったと思います。

原作から逸脱しようが、名作の誉れ高い劇場版を換骨奪胎しようが、そこに作る義があれば(要するに面白ければ)、リメイクする価値はあります。

ありますが・・。

松本清張ドラマスペシャル・砂の器
(2011年9月10日、11日放送/藤田明二監督)

ライ病が使えないのは原作者側の意向なので仕方ありません(まぁ、その時点で作るなよ、ではあるのですが)。

視点を所轄の吉村刑事にしたのも「中居版」との差別化という意味では十分アリです。

でもよう、何だよ、この脚本、あの演技。以下、鑑賞中のボヤキ実況。

え、何だよ、このクソ生意気そうな女(中谷美紀)、いたかこんな奴・・オリキャラ? 有名女優使ったって事は全編こいつが絡んでくるわけ? 勘弁してくれよ。関係ないけど、昭和30年代にあんなスタイリッシュなポスターねぇよ。

わ、西村雅彦、なんだよ、その役作り。厭味で不愉快で漫画じゃねえか。お前、もう三谷の作品以外出てくるな。

おいおい、玉木、君、所轄の刑事だろ。何でそんなシャッキリバリバリなスーツ着こなしてんだよ。昭和30年代の刑事ってのはみんなモデルみたいな顔で裕福だったのか。

ちょっと待て、何で刑事と記者がペアで聞き込みやってんだよ。公私混同な上に情報ダダ漏れじゃねぇか。新情報掴んだら、まず本部に連絡だろ、何で中谷に電話してんだよ。

音楽の曲調が変わっただけで、捜査線上にもあがっていない相手を「こいつが犯人だ!」って、エスパーか、お前。冗談は変な髪形だけにしてくれ。いちいち空襲空襲うざいわ(焼夷弾のCGは結構正確だな…)。

捜査会議はコントじゃねえ! 西村お前少し黙ってろ!鬱陶しい!

4時間もかけてるのに、お遍路の理由と殺人の動機はスルーかい。千代吉の「父さんは病院へ行く」って台詞だけであとは“皆さんご存知でしょ”ってか。

玉木も蔵之介も目ん玉ひん剥けば迫真の演技だと思ってんのか。間違いだ!

以下略。結局、橋本忍山田洋次の神業脚本、神業であるが故に強引かつ独りよがりな脚本のほころびを有無を言わせず魅せきった野村芳太郎の豪腕演出、思い出すだけで鳥肌が立つ芥川也寸志&菅野光亮の名曲「宿命」、そして川又昴の列島の四季を焼き付けた映像の素晴らしさを再認識するだけの結果になりました。

もし万が一、今回初めて「砂の器」を観た、若しくは「中居版」は知っているけど劇場版は観た事が無い、という方がいらっしゃいましたら、是非、1974年の劇場版「砂の器」をレンタルしてください。決して損はさせません。

※参考:「至福と歓喜の40分。砂の器[1974年]」→2010年2月1日