デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

王の羽に抱かれて不思議の国へ。 片腕ドラゴン

イメージ 1

人間、ここまで華麗かつあっさりと常識をフライングされ続けると感覚が麻痺して、「お、俺は今何を観ているんだ?」という疑問すら消えて蓮の花咲く無我の境地へ幽体離脱

さあ、あなたも王の羽に抱かれて不思議時空へ。

「片腕ドラゴン」(1972年/ジミー・ウォング監督)

最近、暴力団との癒着が取沙汰されて芸能界を引退した人がいましたが、天皇巨星・ジミー・ウォング(王羽)は、その道の終着駅。

倉田先生をして「ジミーは役者が副業で本業はヤクザ」と言わしめた“芸能界逆らっちゃ駄目ランキング”アジア代表。

彼の代表作にして不条理クンフー映画の金字塔が本作。

対立する正徳武館(善いモン←当然ジミー先生はこっち)と鉄鈎門(悪モン)。まともにやり合っても勝てないと知った鉄鈎門は海外からFAの用心棒を緊急招集。

沖縄空手、柔道、ムエタイ、テコンドー、ラマの密教拳法などの猛者を集めて殴り込み。

もうこの時点で怪しさ満開(でもムエタイはちゃんと戦う前にワイクーを舞って、首固め&膝連打してますし、柔道も巴投げを繰り出したりしてそれなりに各派の特徴は出しています)。

ここで何と!沖縄空手の師匠がチョップ1発でジミーの右腕を根元から切断(衝撃映像)!

仲間を皆殺しにされたジミーはひとり山中へ。偶然にも医者の親娘に助けられますが、回復の過程を静止画数枚で済ませる実験演出。

回復したものの「右腕のない武道家なんて」と落ち込むジミーに、親娘は「左手を鋼鉄にすればいいじゃない」と素敵な提案。

「そんな事ができるのか?」
「この秘薬を使えば。しかし、そのためには全神経を焼き切らねばならない」

ひ、秘薬って何だ。全神経を焼き切るってどういう事だ?!

という疑問をよそにジミーは燃え盛る火鉢に何度も腕を突っ込んで神経焼却。その腕を秘薬に漬け込む事1ヶ月。一撃で岩をも打ち砕くアイアン・アームに大変身!

鉄の腕となったジミーは敵討ちの殴り込み。常識無用の異種格闘技戦開幕!

やっている事は滅茶苦茶ですが、骨子は、英雄が試練を受け、死の淵を彷徨い、これを克服して敵に打ち勝つという神話の基本フォーマット。

ジミー先生にクンフーの心得などビタ一文無い事を思えば、カルトとして昇華した本作は神憑り的傑作と言えるでしょう。

※参考:「逆らっちゃ駄目。ジャッキー・チェン/ドラゴン特攻隊」→2010年9月4日