『テレビは真実ではない。ただの遊園地だ。
真実を求めるなら神のもとへ。
導師のもとでもいい。自分自身だって構わない。
真実はそこにしかないからだ!
テレビから真実は得られない。
心地よい言葉を発し、嘘ばかり言う。
幻を提供している。そこに真実は無い!
それでも皆は毎日テレビの前に座る。
老いも若きも。そして洗脳される。
テレビが映す虚構を信じ、テレビこそ現実で自分は幻だと思う。
そしてテレビに従う。服装も食事も。
育児や考え方もテレビに従う。
これは正に集団的愚行だ!
だから消すのだ。今すぐテレビを消しなさい。
私が喋っている間にテレビを消すのです。早く!』
はい、そうします。
「ネットワーク」
(1976年/シドニー・ルメット監督)
ハワード・ビール(ピーター・フィンチ)は、USBテレビのニュース・キャスター。
一時は大物扱いされていましたが、今や落ち目。
カミさん亡くして、酒に溺れて、解雇決定。
鬱に拍車のかかったビールは、生本番中に自殺予告。これが大ウケ、話題沸騰、解雇撤回。
やがて、彼は民衆の怒れる代弁者として毒舌を揮い、遂には預言者として神憑り的発言をするように(多分、躁転したんでしよう)。
視聴率のためなら何でもやるTV局の内幕暴露という社会派系ではありますが、リアルが希薄。どこか御伽噺のようなブラック・コメディのような。
ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、ロバート・デュバルという芸達者な自滅系(ワイルド・バンチ+俺たちに明日はない+ゴッドファーザー)が周りを固めているので、逆に色合いが掴み難くなっているようです。
“テレビには真実を暴く力がある”という悲惨の中にも一縷の望みを残した「チャイナ・シンドローム」の翌日に“何馬鹿な事言ってんだ。全部嘘っぱちに決まってんだろ”な本作を放送。しかもNHK(12/6)。
これこそ、壮大なブラック・ユーモアではないでしょうか(自虐の意識があればの話ですが…)。