デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

今すぐテレビを消せ! ネットワーク

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『テレビは真実ではない。ただの遊園地だ。

 真実を求めるなら神のもとへ。
 導師のもとでもいい。自分自身だって構わない。
 真実はそこにしかないからだ!

 テレビから真実は得られない。
 心地よい言葉を発し、嘘ばかり言う。
 幻を提供している。そこに真実は無い!

 それでも皆は毎日テレビの前に座る。
 老いも若きも。そして洗脳される。
 テレビが映す虚構を信じ、テレビこそ現実で自分は幻だと思う。
 そしてテレビに従う。服装も食事も。
 育児や考え方もテレビに従う。

 これは正に集団的愚行だ!

 だから消すのだ。今すぐテレビを消しなさい。
 私が喋っている間にテレビを消すのです。早く!』

はい、そうします。

「ネットワーク」
(1976年/シドニー・ルメット監督)


ハワード・ビール(ピーター・フィンチ)は、USBテレビのニュース・キャスター。

一時は大物扱いされていましたが、今や落ち目。

カミさん亡くして、酒に溺れて、解雇決定。

鬱に拍車のかかったビールは、生本番中に自殺予告。これが大ウケ、話題沸騰、解雇撤回。

やがて、彼は民衆の怒れる代弁者として毒舌を揮い、遂には預言者として神憑り的発言をするように(多分、躁転したんでしよう)。

視聴率のためなら何でもやるTV局の内幕暴露という社会派系ではありますが、リアルが希薄。どこか御伽噺のようなブラック・コメディのような。

ウィリアム・ホールデンフェイ・ダナウェイロバート・デュバルという芸達者な自滅系(ワイルド・バンチ+俺たちに明日はないゴッドファーザー)が周りを固めているので、逆に色合いが掴み難くなっているようです。

“テレビには真実を暴く力がある”という悲惨の中にも一縷の望みを残した「チャイナ・シンドローム」の翌日に“何馬鹿な事言ってんだ。全部嘘っぱちに決まってんだろ”な本作を放送。しかもNHK(12/6)。

これこそ、壮大なブラック・ユーモアではないでしょうか(自虐の意識があればの話ですが…)。