アメリカ。マサチューセッツ州北部の丘陵地帯。廃屋同然の家屋が立ち並ぶ呪われた寒村、ダンウィッチ。
1928年に起きた怪事件の後、ダンウィッチへの道標はアイルズベリィ街道から取り払われたという。
その怪事件の顛末を語ったH.P.ラヴクラフトの小説を完全漫画化。
「ダンウィッチの怪」
(PHP研究所/宮崎陽介・原田雅史:画)
ラヴクラフトを漫画にする・・小説を読んだ人なら分かると思いますが、ウルトラ無茶企画、ハイパー無謀オペレーションです。
この世ならざる者、旧支配者の復活をテーマにした壮大な神話体系、しかも、文体が古い上にあまり上手いとは言えない翻訳の為、どうしてもビジュアルが伝わり難い。
映画化された作品はどれもはらほろひれはれな出来で、行間の恐怖を映像化する事の難しさを都度再確認する破目に(スチュアート・ゴードン監督の「DAGON」はお気に入りですが)。
まぁ、その意味で、原作を補完する漫画は待望だったとも言える訳ですが…。
夜鷹が夜通し啼き続け、犬という犬が吠えつづけた1913年2月2日の聖燭節の夜、この世に生を受けた男、ウィルバー・ウェイトリー。
特異な容姿と急速な成長のため、村中から忌み嫌われたウィルバーは、禁断の魔道書「ネクロノミコン」を解読し、邪神ヨグ・ソトースの召喚を試みる。
誕生→成長→解読→召喚→対決という流れを分かりやすく描いた漫画版はなかなかに“いい感じ”。
本書には、クトゥルフに魅入られた日本人を時代毎体系的に網羅する東雅夫氏の解説も掲載されており読み応えがあります。
映像作家、とりわけSF/ホラー界の住人にもラヴクラフト傾倒者が多数。
正規の映像化ではありませんが、ルチオ・フルチの「地獄の門」で、事件の発端となる町の名前はダンウィッチでした(同年の「ビヨンド」では小道具に“エイボンの書”が)。
カーペンターの「マウス・オブ・マッドネス」もタイトルからしてまんまクトゥルフ。
「ウルトラマン・ティガ」の最終エピ(超古代人を滅亡させた邪神ガタノゾーアが滅びの闇を伴って海底から復活する)なんか、正にそのものズバリのクトゥルフ神話です。
来月は、そんな“ラヴクラフティアン”の作品も追ってみようかと思っています。
※参考:「マウス・オブ・マッドネス」
→2008年6月18日/2010年5月15日
「その本質は光。ウルトラマン・ティガ/最終3話」
→2010年3月31日
「なんとエイボンの書が! ビヨンド」→2010年11月2日