高森朝雄(梶原一騎)の原作にいらんオリジナリティをねじ込む女脚本家(篠崎絵里子)って…。
ウルフ金串が白木ジム所属というのは許す。この尺でアジア拳の大高会長を出している余裕はないだろう。
しかし、白木葉子がドヤ街出身で、土地買い叩いて再開発ってエピはなんじゃらほい。
「あしたのジョー」(2010年/曽利文彦監督)
泪橋を渡る丈の後姿を捉えたカメラがクレーンで上昇してドヤの全景を捉えた瞬間“あの”イントロが流れた時は、ぞわわと総毛立ちました。
更に写真で見た時は何の冗談かと思った香川照之の丹下段平が出てきて喋った時の“こ、こいつは口の中に藤岡重慶を飼っているのか?!”な衝撃。
泪橋、ドヤ街、丹下拳闘クラブ、そして丹下段平の再現度はほぼ100%と言っていいでしょう。
ダメ押しに力石徹を演じた伊勢谷友介の肉体の説得力。
お膳立ては完璧。素晴らしいの一語です。これで脚本と演出がまともだったら有名漫画原作映像化の初成功例になったでしょうに。
もうとにかくエピを消化するために端折りに端折るので、キャラの深みがまるでありません。
丈はヤクザの下っ端・西との軽い喧嘩でいきなり少年院送り。
豚に乗ってトンヅラなんてエピはもちろんなく、すぐ力石と試合決定。段平が丈に必殺パンチを伝授するシーンは、それがクロスカウンターである事をシルエットでバラす無神経演出。
青山くんエピは当然割愛で、即出所。段平の過去が災いしてジムが公認されず、丈がウルフ金串を控え室でクロスカウンターの餌食にしてマスコミを煽り、プロテストを受けるも失格、なんてエピはまるっと省略して、即合格&プロデビュー。
ウルフ金串との試合を申し訳程度に見せて、一気に力石地獄の減量エピへ。
ここで一心不乱にアッパーの練習のみ繰り返すという重要な画を見せず(当然、丈がアッパーからストレートのコンビネーションを両手ぶらりでかわす特訓も無し)、いきなり試合。
そんなこんなで力石戦が終了するのが1時間50分過ぎ。はて、あと25分以上何をするんだ?と思ったら何も無し。
丈が消えたの帰ってくるの来ないのとだらだら話を延ばして、特に理由も無く丈が戻ってきて、おしまい。おいおい、だったらもうちっと丁寧に撮るべきシーンがあったんじゃないのか。
で、どう考えても白木葉子(香里奈←まずこのキャスティングが駄目)のドヤ街エピは変(ってか不要)。
画から察するにええとこのお嬢だった少女がドヤの修道施設みたいな所に預けられるのですが、何故親元を離れるのか、それがよりによって何故ドヤなのか、の説明は一切無し。
人心を荒廃させるドヤの存在を憎んで、土地を買収して再開発名目で取り潰す・・そんな話が「あしたのジョー」に必要か?
忘れてましたが、丈役の山下智久くんは、流石ジャニーズな演技でした(良かったなぁキムタク。君の演技の後継者が出来たぞ)。
※参考:「追悼、出崎統監督。 あしたのジョー2」→2011年4月19日