デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

謎解きで更なる迷宮へ。 ドニー・ダーコ[DC版]

イメージ 1

国内版は発売される気配が微塵も無いので、輸入版を取り寄せました。

監督のフェイバリットは「2001年」「未来世紀ブラジル」らしいのですが、ひょっとしたら「ビューティフル・ドリーマー」なんかもお好きなんじゃないでしょうか?

 

ドニー・ダーコ[DC版Blu-ray]」

(2001年/リチャード・ケリー監督)

オリジナル113分に対し、ディレクターズ・カット版(以下DC版)134分。

単に21分の追加カットがあった、というレベルの変更ではありません。

いきなりオープニングの主題歌が挿し変わっていたのにも驚きましたが、構成そのものが大きく変更されています。

キー・アイテムは、死神オババ(Grandma Death)が、若き日に執筆した「タイムトラベルの哲学(The Philosophy of The Time Travel)」。

オリジナルでは単なる小道具のひとつでしたが、DC版ではこの本の章立てに従って話が進みます。

“タイムトラベルに影響を与えるアイテムは水と金属”という記述に導かれて、学校水浸し事件と犬の銅像脳天斧打ち込み事件が(配水管叩き壊すドニーの描写がしっかり入っている)。

“The Manipulated Dead”(操作された死者)、“The Manipulated Living”

“The Tangent Universe”(隣接する宇宙)

といった本のチャプター・タイトルがヒントであり答であり…。

オリジナルだと、恋人の死を、時間を遡って自分と出会う可能性をなくすことで防ごうとするロマンチックな話に見えますが、監督の意図はちょっと違う所にあったようです。

捻じ曲がってしまった時空を元に戻す為に奔走するヒーロー、それがドニーに与えられた使命でした。

“When The Manipulated Awaken From Their Journey Into The Tangent Universe, They are Often Haunted by The Experience in Their Dream. Many of Them Will Not Remember.”

「操られた者が『異界』への旅から目覚めるとき、彼らはしばしば夢の中の体験に取り憑かれる。彼らの多くはその事を覚えていないでしょう。

まあ、謎解きと解釈は観た人の数だけあっていいと思います。本来DC版であったものをオリジナル版まで“削った”んだとすれば、監督自らが解釈の幅を許容した、という事でしょうし。

個人的にはオリジナル・DC版双方に共通する最大のヒントは、デート・ムービー「死霊のはらわた」の併映作「最後の誘惑(The Last Temptation Of Christ)」ではないかと。

にしても入場料安いなぁ。2ドルって…。“Two For Evil Dead”で“That'll Be Two Dollars”ですから二人で2ドルですよね。一人1ドル。

「はらわた」は83年ですが、「誘惑」は88年。時代設定が88年だからほぼロードショーじゃないですか。

日本の入場料金って常軌を逸しているんですね。


★ご参考