基本骨子はほぼオリジナル通りなのに、なんだこの不完全燃焼な中途半端さは。
「男たちの挽歌 A Better Tomorrow」(2010年/ソン・ヘソン監督)
ご存知男汁スプリンクラーの上を男泣きラッセル車が全力疾走するジョン・ウー学校入門書の韓国リメイク(売り手はリウェイク―再覚醒―とか言っていますが、どーでもいい)。
主人公兄弟が生き別れの脱北者という設定変更以外はかなりオリジナルに忠実。
一応、ジョン・ウー自身も製作総指揮に名を連ねているので大きく外す事はあるまいと思いましたが、見事に玉砕。
大体、何でオリジナルを脚色するだけで4人も脚本家がいるのよ。
どいつもこいつも皺の伸びきった腐女子向けつんつるてん顔でビタ一文印象に残らないのは、日本も韓国も似たような状況のようですが、んな事ぁこの際どうでもいい。
致命的なのはオリジナルでレイ・チーホンが演じたシンに相当するテミン(チョ・ハンソン)の扱い。
オリジナルの台湾取引は「何者か」の密告による罠でしたが、今回のタイ取引はあからさまにテミンの裏切りによるもの。
ヒョク(チュ・ジンモ。オリジナルでティ・ロンが演じたホー)も、携帯とか持ってるんなら、親代わり刑事に「弟よろしく」とか言ってないで、相棒ヨンチュン(ソン・スンホン)にテミンの裏切りを告げるべきだろう。
結局、このことが最後まで尾を引いて、「とっととテミン殺っちまえば終わりだろうが!」というフラストレーションが続くハメに。
ヨンチュンの対タイ人報復カチコミも演出にタメがないから、気分が盛り上がる前にハイおしまい。
何より、このカチコミで片輪になったヨンチュンとタイ刑務所を出所したヒョクの再会シーンが駄目駄目。
ここはオリジナルでは、マーク(チョウ・ユンファ)の切々たる想いをぶちまける最大の見せ場。
「ペコペコするのは嫌だ。物乞いは御免だ。お前が出てくるのを3年待った。失ったものを取り戻したい。二人で巻き返そう!」
折角、オリジナルのテーマ曲がアシストしてくれていると言うのに、あっさりすっきりタメ無し引き無し涙無し。
これでヨンチュンが、元北の特殊部隊という設定を生かして徒手空拳で死体の山でも築いてくれれば、流石韓国手加減無し、と溜飲も下がろうというものですが、結局殺したのは見張りのひとりだけ。
おいおい、わざわざバッグ一杯に詰め込んだ銃火器は何だったんだよ。どうせ最後にこいつら全員相手にして銃撃戦やるんだから、5人でも10人でも殺っときゃいいじゃねえか。
「2」を作る気は無い!という潔さは認めますが、兎に角イライラしっぱなしの124分(長いよ!)でした。
あ、あとエンディングに流れた耳の腐る差し替えソング、ありゃ一体なんじゃらほい。エンド・クレジットまで含めてその監督の作品だろが。勝手に手加えていいとでも思っているのか配給会社は(契約がクリアされているかどうかって話じゃないぞ)。
監督と脚本家はオリジナルに加えて「龍虎兄弟」各100回観直しの刑。
※参考:「男たちの挽歌」→2008年1月25日
「龍虎兄弟」→2008年2月20日