デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

批判なき自虐。 エロティックな関係

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「(フランス語で)この映画は、蟻のように働く日本人が、ジャパン・マネーで作った日本人のための映画です。オール・パリロケの言葉に騙されないでください。パリで撮っているだけです。ミッテランは泣いています。フランス万歳!」

出演者(内田裕也宮沢りえビートたけし)と監督(若松孝二)の名前に惹かれて観てしまいましたが、いやあ、まいった。

これがせめて歌舞伎町だったら、まだハードボイルドを気取ることも不可能ではなかったでしょうが、なまじパリになんか行ってしまったばかりに、バブル徒花満開の三文芝居になってしまいました。

「エロティックな関係」(1992年/若松孝二監督)

パリの路地裏にオフィスを構える篠山紀信探偵事務所・・いやもうこの設定だけで開いた口が・・。

内田裕也は劇中ではKISHINとしか呼ばれませんが、電話に出た秘書RIE(宮沢りえ)が「はい、篠山紀信探偵事務所」と応えています。

ここに妻の浮気調査を依頼してきた謎の男・奥山(ビートたけし。奥山は製作者:奥山和由でしょうねえ)。

以下、ストーリーはどうでもいいので割愛。ありていにも程がある激安サスペンスです(原作はレイモン・マルローの「春の自殺者」)。

困ったのは時折挿入される内田裕也のたどたどしい独白。

“俺は頭の中が真っ白になってしまった。そして、この女だけは絶対離したくないと思った”

“たとえ打ち合わせ通りとは言え、ロレーンがあの中で見知らぬ男に抱かれるのかと思うと、俺の胸は張り裂けそうだった”

聴いているこっちの胸が張り裂けそうになるくらい恥ずかしいです。

宮沢りえのガンアクションが思ったよりサマになっていたのは収穫でしたが、この銃撃シーン、あってもなくてもいいんだよなぁ(むしろ無い方がいい)。

冒頭のナレーションも洒落のつもりなのでしょうが全く以って洒落になっていません。

批判なき自虐。全てが空回り。若松孝二は何でこんなバブリー企画を受けたんだろう(“あぶく銭”とはよく言ったものだ)。

元ネタのロマンポルノ「エロチックな関係」(1978年/長谷部安春監督)は未見。ちょっと観てみたい。

※参考:「エロスの果てのタナトス。胎児が密漁する時/犯された白衣」
      →2010年1月14日
     「そこは狂人製造機。 壁の中の秘事」→2010年2月21日
     「総括せよ! 実録連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」
      →2010年2月25日