デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

シャワールーム、トム・サビーニの回答。 ローズマリー

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名作・名シーンの誉れ高い「サイコ」のシャワーシーン。

改めて観てみると、不自然極まりない映像です。

ナイフを振りかぶる黒い影と叫ぶ女の顔(口)のアップ、振り下ろす影(正面)→叫ぶもしくは顔を振る女のアップのカットバック。

殴られている訳ではない(はず)なので、顔を振るのであればナイフが顔面をヒットしているはずですが、そのような痕跡はありません。

揉み合うツーショットとナイフの平らな所が女の腹を撫でるカットはありますが、切るカットも刺さるカットも(見える見えないは別にして)無し。

唯一、背中に振り下ろしているっぽいカットはありますが、女が寄りかかった壁のタイルに血痕は無く、倒れこんだ女の背中には傷ひとつありません。

これはつまり、ナイフ持った影と叫ぶ女のアップが映って、足元に血と思しき液体が流れたんだから、当然、殺人が行われたに決まっているよな、という記号でしかないわけです。

実はおもちゃのナイフを持ったお茶目なおっさんが脅かしに来たら、びっくりした女の生理が始まってしまっただけかもしれません。

だからこそ、ヒッチコック“巧い!”と同時に“つまらない”んですね、私にとっては。

このヒッチコック演出に対するトム・サビーニの回答が本作なのではないでしょうか。

ローズマリー(1981年/ジョセフ・ジトー監督)

過去の惨劇によって封印されたプロム・パーティが再開された夜、再び殺戮者の黒い影が…という80年代王道スラッシャーなストーリーはこの際どうでもよくて…。

本作の白眉は適当かつ場当たり的な展開の合間合間に挿入されるゴア・シーン。

軍刀が脳天から顎を貫き、首に喰い込んだままグーリグリと左右に動き、ショットガンが頭部を吹っ飛ばし…。

トム・サビーニが持てるアイデアを惜しみなく投入した特殊効果大全集。

中でも凄まじいのがシャワールーム・シーン。

ヒッチ先生の映画では決して拝む事ができない巨乳満開。曇りガラスの向こう側に現れる軍服に身を包んだ黒い影。

ガラス戸を引き開けるや否や差し込まれるピッチ・フォーク(藁とかを持ち上げたりするのに使う鋤によく似たでっかいフォーク)。

これが腹部にズドーン! 当然流血! 吐血! 更にそのまま持ち上げる荒業披露。

敢えて(局部を)見せない奥ゆかしさも分かりますが、スラッシャーは殺してナンボ。

人体に刃物が差し込まれると(銃弾が撃ち込まれると)どうなるのか、を正しく見せる事は教育上も良いと思います。

サビーニの人体破壊カタログ。じっくりとご堪能ください。