155話続いた長寿シリーズ(最高視聴率30.5%)を最後の最後に全否定(しかも遡及的)。
暴れ宮崎世直しアニメ。
「新ルパン三世/最終回・さらば愛しきルパンよ」 (1980年10月6日放送/照樹務監督)
照樹務はテレコムを捩った宮崎駿の変名。
新ルパンの節操の無さ、作り手のポリシーの無さに業を煮やした宮崎監督の怒りの鉄拳が炸裂します。
永田重工で開発された装甲ロボット兵「ラムダ」を輸送中に何者かが強奪。
犯人はラムダ発明者の娘・小山田真希とルパンたち。
軍用ロボットの危険性を訴えるため、マキは自らラムダを操縦してその力をアピールし、ルパンは軍事開発を中止せよとの声明を出しますが・・。
全てはロボットの売り込み(ショーケース)を画策した永田重工の一人芝居。ルパンは永田重工社長の愚息が変装したニセモノでした。
今、製作年次を考えずに観ると「おお!ナウシカがラピュタのロボット兵に乗って東京の街を飛んでいる!」となりますが、ナウシカが公開されるのは4年後の1984年。ラピュタは更に2年後の86年です。
つまり、本作がナウシカ、ラピュタのプロトタイプ(小山田真希の声をアテているのは後のナウシカ、島本須美)。
ニセルパン、ニセ次元、ニセ五右衛門は、最後の最後に現われたホンモノルパンらに成敗されるのですが、宮崎監督は「本シリーズ155話(除く死の翼アルバトロス)に登場してきたルパンは全部ニセモノ」という壮大なトリックを仕掛けているようです(当時の「アニメージュ」に自白インタビュー有り)。
私も安いドタバタ喜劇になってしまった新ルパンに強烈な違和感を覚えていたクチなので、いささかチャイルディッシュな宮崎監督の反抗(犯行?)に、眉をひそめるべきなのか、目を細めるべきなのか迷う所ではあります。
後にラピュタのロボット兵になるラムダですが、更に元ネタを手繰ると、フライシャー兄弟によるスーパーマンの一編「メカニカル・モンスターズ」に登場するロボットのようです。
飛行するラムダを見た銭形(実はホンモノルパン)が「まるでスーパーマンですなぁ」とか言っているので確信犯的オマージュなのでしょう。
参考までにスーパーマンのロボット画像も添えてみました(写真上2点)。比べてみてください(多分、この先に「アイアン・ジャイアント」のデザインがあるのでしょう)。
監督の意図はさておき、本作の作画はシリーズ中群を抜いています。緻密な建造物密集地帯におけるラムダと自衛隊戦車の市街戦など映画にしてもいいくらいの出来栄えです。
私は大隈正秋氏による初期ハードボイルドルパンのファンなのですが、宮崎監督の過剰な偏愛には“憎めないもの”を感じます。