デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

制御不能の白い猿。 ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団

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『仏様を大事にしない奴は死ぬべきなんだ!』

かつてここまでラジカルな決め台詞を吐くヒーローがいたでしょうか?

仏像を盗み、それを咎めた敬虔な少年を撃ち殺した悪党を追い掛け回し、踏み潰し、握り潰し…。

しかも「どうした悪党」「ほーら、逃げてみろ」などと暴走族の追い込み漁の如き奇声を発しながら、間合いを詰めていくという念の入れよう。

正に血に飢えた白い猿神。その名はハヌマーン

「ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団」
(1974年/東條昭平監督)


ウルトラ兄弟を名乗っていますが(ジャケット・メインはタロウ)、主役はハヌマーン。舞台は勿論タイ。スタッフは日本人ですが役者は全員タイ人です。

太陽が突如暴走して地球に大接近。温暖化を素通りして灼熱地獄。タイでは子供たちが雨乞いの踊りを。

リーダー格の少年コチャンは、仏像泥棒を見つけて後を追いますが、犯人に眉間を打ち抜かれて即死(顔面血まみれで「ぎゃー!」と絶叫するカット有り)。

これを遥かM78星雲から観ていた仏様…じゃなくてウルトラの母は、コチャンの死を悼み、彼に新たな命を与えるために時空を超えた遺体泥棒を決意。

井戸のような穴に「せいや!」と腕を差し込むと、タイの天空から巨大な腕がコンニチハ(写真2枚目)。

タイ大パニック! 巨大な腕はコチャンの亡骸を掴むと再び空へ。

「うわぁ、コチャン!」泣き叫ぶ子供たち(そりゃそうだ)。

一瞬でM78星雲に運ばれたコチャンはウルトラ・ファミリーの秘儀で、タイの白猿神ハヌマーンとして大復活!(写真上)

常識を景気良くフライングした飛行形態(卍型の立ち姿勢をキープ。写真上内参照)で颯爽とタイに戻ったハヌマーンは干ばつに苦しむ民はひとまず置いておいて、自分を殺した盗賊一味にお礼参り。目出度く全員を地獄送りにした所でようやく本題に着手。

ハヌマーンが行ったのは、何と太陽への直談判。

『お前は地球に近づきすぎている。
 もうちょっと離れてくれ』

『うむ。そうしよう』

問題解決!(どこをどう突っ込んでいいのか見当もつかない)

ここで終わってもいいのですが、それだとアレなので、唐突に怪獣が5体登場して大暴れ。

5対1のハンディキャップ・マッチに苦しむハヌマーン。そこにウルトラ6兄弟が駆けつけ、あっという間に形勢逆転。7対5の逆ハンデ戦に。

左右から両手を押さえつけられた怪獣をハヌマーンが長剣で(しかも後から)滅多打ち。ほとんどリンチ。

皮を剥がされて骸骨になる奴も。

異端者として迫害されるマイノリティの暗喩として怪獣を捉えていたウルトラ・シリーズと同じ地平にあるとは到底思えない残酷絵巻(恐ろしい事にギャグとして演出)。

監督がシリーズ1.2を誇る問題作「怪獣使いと少年」を撮った人と同一人物というのが更に驚愕。

ハヌマーンは猿なので、のべつまくなしウッキーな(落ち着きの無い)動きをしていて、実に鬱陶しい(笑)。

ご存知の通り、版権に関しては円谷とチャイヨーが揉めに揉めている(一応の判決は出ていますが、日本とタイの判決の違いによって事態は更に泥沼に)ので、国内版がDVD化される事は当面ないと思いますが、古いレンタル屋に行けばVHSが見つかるかもしれません。見つけたら合掌してお借りしましょう。

教訓:仏様は大切にしよう。

 

★同じ監督が撮ったとは思えない問題作