「ここにひとつの鉄の塊がある。かつて鉄人と呼ばれたそれは、日本の高度成長期を支えた礎の如く姿を変え、平成と呼ばれる今も尚、この日本のどこかに誰にも知られず身を隠している。そして、その姿は、時代の全ての罪を一身に背負ったように、赤く、黒い…」
後半戦クライマックス10話の幕開きである第17話「黒龍丸事件」のオープニング・ナレーションです。
もうこれを聞いただけで、この作品がハッピーな、少なくとも明朗快活な冒険譚としてのエンディングを迎える気などビタ一文無い事が分かります。
大戦の末期、太平洋に沈んだ船・黒龍丸。誰もが忘れてしまいたい、その船が爆煙と共に覚醒する…。
船内に隠された謎の物体。その側面に刻まれた“正太郎”の文字。
それを合図にしたかのように急転直下する物語。
ベラネード財団の日本上陸、大塚署長の更迭、敷島博士の自殺、金田博士のスパイ疑惑。
差し押さえられる金田邸と鉄人。
後ろ盾の全てを失った正太郎を支えたのは宿敵・村雨健次。
正体不明の鉱物資源バギュームをトリガーとする太陽爆弾。地球を道連れにする威力を持つ最悪兵器。その隠し場所は…鉄人の体内。
全滅という抑止力を狙う各国の思惑の中、廃棄処理の決定が下される鉄人。
しかし、大塚(元)署長の嘆願により、鉄人が兵器か道具かを問う公聴会「鉄人査問委員会」が。
「鉄人28号/裁かれる鉄人」(小林孝嗣・春霧勝己演出/今川泰宏脚本・絵コンテ)
SF冒険活劇から100万光年離れた大東亜戦争戦後秘話。
僅かアンプル1本分のバギュームでセカンド・インパクト並の破壊力を引き出す太陽爆弾を巡る攻防戦の行方は?