デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

紅く塗れ! ドリラー・キラー

イメージ 1

マンハッタンという街には住んだ事は勿論、脚を踏み入れた事もありませんが、どうもこの街は目線の合わせ方によって写るものがかなり異なってくるようです。

ウディ・アレンの目線で見れば、モノトーンで霧の中ジャズが流れる男と女の小洒落た恋と芸術の街。

トラヴィス・ビックルの目線で見れば、退廃にまみれたソドムの市。

更に視線を落すと「真夜中のカーボーイ」とかがいるわけですが、今回は更に下。こ、これ以上は無理です!なくらい地べたに顔を押し付けて、見上げず眺めるマンハッタン。

そこには穢れなき純粋な“狂気”がありました。

「ドリラー・キラー」
(1979年/アベルフェラーラ監督)


ビデオ発売時のサブタイトルは「マンハッタンの連続猟奇殺人」。分かりやすいですねえ。

売れない画家・レノの人生はどん詰まり。

家賃滞納してるってのに同居の女二人は勝手に長距離電話掛けまくるは、ゲイの画商から前借りして描いている画はなかなか完成しないは、同じアパートに越してきたバンド野郎は1日中下手糞な曲をがなりているは。

このままじゃ、電話止められ、電気止められ、水道止められ、家追い出され…。

家の外には寝ゲロ吐いているようなホームレスがわんさか。奴らの仲間入りは御免だ…。

追い詰められたレノはバッテリー・パックを腰に巻き、ドリル片手に憂さ晴らし。

ホームレスの背中にちゅいーん、お腹にぎゅいーん、頭蓋骨にずごごごーん

何か教訓めいた事を言おうとか、サスペンスを盛り上げようとか、ビタ一文考えていない辺り好感度うなぎ登り。

ラストの赤一色の画面に惨劇を予感させる会話が被り、そのままエンドロールというぶった斬り方にセンスを感じます。

今回は“物凄く安い!もの凄く汚い!”を座右の銘にしている(としか思えない)WHDのDVDで鑑賞したのですが、いやあ、酷い(笑)。

どれぐらい酷いかと言うと、Youtubeに落ちている動画の方が100倍は綺麗なんじゃないかというくらい酷い。

Youtubeで「おお、ここにこんなものが写っていたんだ」とか「彼女の服は真紅だったんだ」など発見多数。

しかし、この“8mmで撮ったのかよ!?”な画質が実にドキュメンタリー・チックで、実は全編隠し撮りだったんじゃないか、と思える臨場感を醸し出しています。

まあ、実際、寝ゲロ吐いているホームレスとかは全部隠し撮りなんだと思いますが。

フルチ爺さんの「地獄の門」に先んずる事1年。ドリル殺人のパイオニアです。

Youtubeの動画だとラストの赤一色画面が黒味になっていたのですが、どっちが正解なのでしょうねえ。あそこは赤(アルジェント・レッド)だから良い、と言うか赤でなければならないと思うのですが…。

あと、冒頭で登場する教会のヒゲ親父(レノの住所と電話番号を書いたメモを持っていた)が、その後一切話に絡まないというのは如何なものかと思います。