デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

短縮版で準備運動。 メトロポリス[1926年版]淀川長治解説付き。

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「見事な人造人間。なんてドイツは綺麗なんだと思いました。そしてずっと後にスターウォーズとか、ああいう映画観ましたのね。そしたらスターウォーズに人造人間出てくるの、ころころころころって出てくるんですね。あれメトロポリスの人造人間のすっかり真似。しかも非常に下手なの。なんてアメリカは下手なんだと思います」(淀川長治

紀伊国屋さんが150分バージョンを出した今、何ゆえ94分の短縮版を、しかも72年のアメリカ公開版を仕入れたのか。

ひとつは冒頭に挙げた淀川長治先生の新撮解説がついているため。

もうひとつは、ジョルジオ・モロダーBlu-ray(輸入版。当然日本語字幕無し)視聴前に、最も尺の近いバージョンを観て、台詞その他の日本語字幕を確認しておくため。

メトロポリス(1926年/フリッツ・ラング監督)

アメリカ版の音楽はゴッドフリート・フッペルツではなく、スチュアート・オダーマン。

画と合わそうなどという気持ちはさらさら無く、とりあえず音楽ついてりゃいいだろ的ピアノ爪弾きBGM。

おかげで物語と特撮をじっくり堪能する事が出来ました(笑)。

資本家の楽園、メトロポリス。街を維持するのは片時も休む事無く地底で働き続ける労働者たち。不満、苛立ち、鬱憤。臨界点は目前。

一計を案じた支配者は、労働者のアイドル、マリアそっくりの人造人間を開発。

目的は、地下労働者を人造人間マリアに扇動させて過激な行動をとらせ、弾圧の機会を作ること。思惑通り事は運ぶかに見えましたが…。

ダークサイド・マリアの悪魔的アジテーションで労働者は一気に本格的破壊活動に突入。機械を打ち壊し、貯水池を破壊。地下都市に水没の危機が!

この作品の魅力はイチにもニにもブリギッテ・ヘルム演じるマリアでしょう。

清楚な善マリア(写真2枚目)と邪な悪マリア(写真下)。

特に悪マリアの演技は、登場シーンの退廃的ダンス(写真3枚目)、いかにも悪な目つき手つき腰つき、全てが神憑り。

淀長さん絶賛の人造人間(マリア擬態前。写真上)のデザインも素晴らしすぎ。

ラストの労使大団円は絶対長続きしない偽りの平和に見えますが、「手(Hands)と頭脳(Mind)を繋ぐのは心(Heart)でなければならない」というキーワードは、よく出来た箴言だと思います。

ようし、準備万端。待ってろ、モロダー!

 

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