デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

馬鹿なのに…なぜ燃える?なぜ泣ける? 電人ザボーガー

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『ザボーガー、俺を殴って渇を入れてくれ! ザボーガー・パンチ・オン!』

(…ぺち)

『ちっがーう! もっと血が出るまで殴ってくれ! 絆を実感したいんだあ!』

(ドス!)

『おお、いいぞ、ザボーガー! もっとだあ!』

(ドカ!バキ!ズコ!)

嗚呼、こんなに馬鹿なのに。こんなにアホなのに。なぜ燃える? なぜ泣ける?

電人ザボーガー(2011年/井口昇監督)

冒頭、企画・原作:ピー・プロダクションの文字を見ただけで、不覚にも熱いものが(感情が早漏状態)。

バイクが1カットでザボーガーに変形…夢のようなオープニングを経てサブタイトル「第1部 たたかえ!電人ザボーガー!」

そう、本作は驚天動地の二部構成。それは正に「接触篇」&「発動篇」、「Death&Rebirth」。

秘密警察・大門豊(青年期:古原靖久)は、死別した弟のDNAを原動力とする電人ザボーガーと共に、悪の組織Σ(シグマ)と父の仇・悪ノ宮博士(柄本明)に戦いを挑む!

しかし、大門は悪ノ宮博士の秘書兼Σ大幹部・ミス・ボーグ(山崎真実)と道ならぬ恋に。

人間とサイボーグ。この世のものとは思えぬ人知を超越した性愛技法の末、結ばれる二人。

汚職議員を守る正義か、ミス・ボーグとの愛か、一瞬の躊躇は大門からザボーガーとミス・ボーグの両方を奪っていきました。

そして25年…。ザボーガーを失った大門は、汚職議員から総理に上り詰めた若杉(木下ほうか)の運転手になっていましたが、それも解雇。

「第2部 耐えろ大門! 人生の海を!」

熟年期大門は板尾創路。もうザボーガーはいないのに、指令マイク付きヘルメットを被り続け…。

大門に理解を示していた新田警部(渡辺裕之)らも刑事の職を追われ(女房・娘にも捨てられ)、その日暮らし。人間は全てを失っても笑顔でいるべきだ、という「ニコニコ同盟」を結成していました。

おまけに大門はシュークリームの食べ過ぎで糖尿病。中高年の悲哀をこれでもか!と見せつけて物語は怒涛のクライマックスへ。

ギャグが寒いの、真面目に作れの、色々言われておりますが、いいんです、これで。

ストロング・ザボーガーの復活に、デモ田中の特攻に、さめざめと泣きましょう。

「リアリズムを超えるぞぉおおおお!って言うか超えたあぁあああ!」

歴史的名台詞です。

「自殺しようとしているおじさんを5人は救う映画にしたいです」(井口昇

本作が真に凄いのは、ザボーガーの完璧なリテイクであると同時に、純度100%の井口ワールドでもある事だと思います。

『チェ~ンジ、ストロング・ザボーガー! GO!』