画像が赤い・汚い、ケースが紙製でホルダーがなく、振るとディスクが飛び出る(後に改良されたらしい)、ジャケット・デザインにセンスの欠片もない(写真下)、音がモノラル、オマケのガイドブックが小さすぎて読めない(正規サイズの復刻版同時発売で特典の意味無し)、そして高い。
散々通り越して悲惨の域に達していると大評判の「風の谷のナウシカ」国内版Blu-ray。
何を出したってどうせ奴らは買うんだから、せいぜい粗悪品を吹っかけてやろう、というジブリの思いやり満開です。
北米版では、これらジブリズム(?)のいくつかが回避できると聞いたので、取り寄せてみました。
「風の谷のナウシカ[北米版Blu-ray]」
(ウォルト・ディズニー社謹製)
まずはジャケット(写真上)。既発DVDのアレンジですが、少なくとも国内版よりは100万倍マシ。
ケースは通常のブルー・レイ・ケース+紙製アウター。
中身はBlu-ray(以下BD)とDVDの二枚組み(双方に本編+個別特典)。
BDをセットすると、最初に映るのが“Walt Disney Studios”のロゴ。これが「なんじゃこりゃ?」ってくらい綺麗。
恐らく本ディスクで最もBDらしい映像なのではないかと思います(因みに2番目は「カーズ2」の予告)。
で、本編。始まってまず驚くのは尋常じゃないフィルム・グレイン。確かに場末の二番館のスクリーンに投影された時の質感の再現には成功しています。
モニターは“映画モード”にしてノイズリダクションもかけているので、チラつきガサつきは抑えているはずなのですが、それでも粒子感はばっちりくっきり(国内版は更に酷いとの噂。UK版はかなり改善されているとの話も聞きますが、いずれも未確認)。
不自然な程に赤みが乗っている感じはありません。
音はやはりモノラル。5.1chにしろとまでは言いませんが、せめてステレオにしてくれ。元がモノラルだとアンプによる小細工もできん(せいぜい前後同時に鳴らす程度)。
映像は場面場面のムラが激しすぎ。ダッチロール的乱高下。
スカッと抜けの良い締まった画があったかと思えば、ピントぼっけぼけの画があったり。
ヌケが良すぎると、オームの動きがFLASHアニメのように見えてしまうという新たな発見も(したくなかった、こんな発見)。
リージョンの関係でデッキが変り(接続もコンポジ&光になり)、同じ土俵での比較は出来ませんが、折角DVDが同梱されているので、こちらも再生してみました。
何とこちらの方が景気良く赤みベタ乗せ(グレイン強調とかは無し)。
ナウシカ赤毛、ユパ赤マント、カイにクイも赤ら顔(マスクがね)。
背景やトメ画は悪くないですが、動く人物の輪郭が総じて甘々。これを観た後にBD観ると発色と言い、シャープネスと言い、なるほどBDだ、という気分にはなります。
文句は山ほどありますが、これならDVDでいいや、ともならないのが辛いところ。
既にDVDを持っている人(ほとんどの人がそうだと思いますが)にとっては悩ましい選択かもしれませんが、買うのであれば北米版(ケースがまとも/デザインがまとも/赤み乗せが少ない/安い←定価比較で国内版の1/3強)をお薦めします。
言語・字幕は(日本語の他は)英語とフランス語のみ(ここのみ国内版の方が多彩)。
因みに、英語字幕と英語吹き替え(クシャナの声をユマ・サーマンがアテています)では言い回しがかなり異なります。
字幕は非常にストレートな直訳調ですが、吹き替えは持って回った(余計な修飾語の多い)言葉遣いになっています。
“腐海”は字幕では“Sea Of Decay”ですが、吹き替えでは“Toxic Jungle”。実態としては吹き替えの方が近いのかもしれませんが、ちょっと頭悪い感じが…。字幕の方が雰囲気は出ているように思います。
“巨神兵”はいずれも“Giant Warrior”。うーん、そのまんまと言うか、これじゃ巨神兵じゃなくて巨人兵だな。“メーヴェ”は単に“Glider”。
“トエト”“ウシアブ”などの名詞は字幕ではきちんと翻訳されておりましたが、吹き替えは総じてスルー。
音声(日本語/英語)と字幕(通常字幕/吹替字幕)は組み合わせ自由なので、色々比べてみるのも一興です。