デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

ネーミングは慎重に。 PUSH 光と闇の能力者

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映画の興行を左右するのは勿論、内容ですが、内容を類推する最初の取っ掛かりはタイトルです。

ネーミングを間違えると正しい観客誘導はできないぞ、という見本のような映画。

「PUSH 光と闇の能力者」(2009年/ポール・マクギガン監督)

特殊能力保持者とそれを管理する政府機関と舞台である香港のご当地特殊能力一家の三つ巴戦を描いたサイキック・バトルもの…なのですが。

タイトルのPUSHというのは、他人に偽りの記憶を“押し込む”特殊能力の事。

PUSH能力保持者はPUSHER。当然、字幕では“プッシャー”になるのですが、一般的には“売人”ですよねえ。

個人的にウケたのは、中国人兄弟の超音波攻撃(写真上)。叫び声一発でガラス粉砕脳みそ圧迫。「ブリキの太鼓」のオスカルが成長したらこんな大人になったのでは?

この超音波がBLEED。BLEED能力保持者は“ブリーダー”なのですが、ええっと犬とかお育てになっているのですか?

他にも、特定期間の記憶を消し去る能力WIPE。能力保持者は“ワイパー”。

どれも「何だかなぁ」なネーミングです。

邦題の「光と闇の」ってのが無駄にダークファンタジーを連想させてしまいますし、「能力者」って所が何故か三浦友和の「超能力者 未知への旅人」と被ってしまって…。

ホント、ネーミングで損しています、この映画。

お話は、政府機関から“何か”を持ち出して脱走したプッシャー、キラ(カミーラ・ベル)を巡る攻防戦。

主役はキラの元カレでもあるムーバー(所謂テレキネシス能力保持者)、ニック(クリス・エヴァンス)と、彼にキラ捜索を依頼にきたウォッチャー(予知能力保持者)のキャシー(ダコタ・ファニング)。

ニックは己の能力を使いこなせない半端者。キャツシーは予知夢を絵に描くのですが絵心がないため意味が伝わらないというハンディキャップ・サイキッカー

対する政府機関側のボス、ヘンリーは、サミュエル・L・ジャクソンのバッタ者プッシャー、ジャイモン・フンスー(写真二段目右。左はサミュエル)。

彼の右腕になるのがニックと同じムーバーのビクター(ニール・ジャクスン)。

ニックと違うのは、己の能力を100%覚醒&コントロールできる所。

パントマイムのような手つきでATフィールドを作り、敵の銃弾を弾き飛ばしながら、思念をぶつけて相手を吹き飛ばす豪腕を披露(普通は主役がやる)。

記憶の改竄能力保持者と予知能力保持者が敵味方双方にいるので、力技のサイキック・ウォーズよりも“頭脳戦”に力点が置かれ、脚本もトリッキーになっているのが新機軸。

カウント4.5の反則技の応酬ではありますが、ギリギリ許容範囲です。

続編作る気満々な終わり方ですが、興行惨敗だったようなので、幻のパイロット版(?)になってしまいそうです。残念。